全長 20cm
このコーナーでは夜の帝王たちのことを「アカマツカサの仲間」と呼んでいる。
けれどホントのところの彼らは「イットウダイ科」に属する魚たちで、その下でアカマツカサ亜科とイットウダイ亜科に分かれる。
イットウダイ亜科の魚たちは、アカマツカサの仲間たちとは、総じて体形が異なる。
とりわけこのウケグチイットウダイは、戦闘的なまでにシャープでスマートな体形がカッコイイ。
ウロコが光を反射することもあって、ストロボをまともに当てると、メタリックボディがキラリと光る。
おお、まるで往年のスーパーカーのようではないか。
これでアカマツカサのような密集隊形で群れていようものなら、リーフ際での注目度もグーンとアップすることだろう。
しかし彼らは、岩陰やサンゴの下などそれぞれのお気に入りの個室で、↓このように休憩していることが多い。
場所によっては、リーフの上や壁際でまばらに、もしくは10匹くらいが集まっていることもある。
でもあくまでも「集まっている」程度で「群れ」という感じではない。
1匹1匹は地味でも、ゴシャッと大量に群れているために誰からも注目されるキンメモドキとは逆に、1匹1匹はわりとカッコよくきれいにもかかわらず、フツーに地味にまばらに居るがために、誰からもスルーされるウケグチイットウダイ。
本人もその状況を知ってか知らずか、リーフ際で1人気張っていた。
ハナグロチョウチョウウオにさえスルーされてますけど……。
でもこのアクビのおかげで、あることに気がついた。
ウケグチイットウダイって、アクビをするとウケグチじゃなくなるのね……。
スルーされ度の高いウケグチイットウダイながら、チビターレはたいそうカワイイ。
色柄やフォルムはオトナと大差ないんだけど、目の割合が大きいからやたらと可愛いチビターレは、秋頃になるとリーフ際の枝ぶりのいいミドリイシの枝間に居ついていることもある。
まるでミニチュアのように小さな5cmくらいのその姿。
でもやたらと警戒心が強く、すぐにサンゴの枝間に入ってしまうので、なかなか記録に残せないでいるのだった。
※追記(2022年11月)
水納島は小さな島ながらも、リーフ内は東西南北でいささか環境が異なる。
西側はわりと水深があって、点在する岩礁(というほどのサイズじゃないけど)があるために、箱庭的な規模ながらも地形がダイナミックだったりする。
そんな岩礁のオーバーハングになっている陰の部分に、ウケグチイットウダイが群れていた。
え?群れている??
あれ?
ウケグチイットウダイって、こんなに群れている魚たちでしたっけ?
本文中でも触れているように、普段のボートダイビングで出会うウケグチイットウダイはリーフエッジ下あたりにそれぞれ個室に納まるように単独でいることが多く、集まっていたとしてもせいぜい10匹ほどでしかない。
ところがこちらでは…
半分くらい岩陰の奥に逃げても、まだこんなにたくさんいる。
この場所限定というわけではなく、似たような地形(隠れ家になる半洞穴)があるところでは…
同じようにたくさん集まっていた。
ウケグチイットウダイは本来、こういう浅いところを好む魚たちなのだろうか…。