全長 6cm
カミソリウオの稿で触れたように、我々シロウトには見分けのつかなかったフウライウオ、カミソリウオ、ノコギリフウライウオの3種が、実はすべてカミソリウオである、ということになったのが1994年のこと。
よかった、これでもうフウライウオなのかカミソリウオなのかということでいちいち頭を悩ませる必要は無くなった…
…というヨロコビも束の間、それに併せて新たに「ホソフウライウオ」なる新和名が登場していた。
しかし当時は現在のように猫も杓子もカメラ派ダイバーという時代ではなかったこともあり、そのすぐあとに世に出た山渓の「日本の海水魚」には、日本中のありとあらゆる魚類生態写真をいろんな人から集めたにもかかわらずホソフウライウオの写真は載っておらず、カミソリウオの説明のところでかろうじてその名が出るにとどまっている。
手元にある図鑑に載っていなければ、その存在を意識していられようはずはなし。
そのため水納島に越してきてからもホソフウライウオなんて名前はまったくノーマークで、恥ずかしながら昨年(2019年)になってようやく四半世紀ぶりに再認識した次第。
で、あらためて過去に撮った写真を振り返ってみると、まだフィルムで写真を撮っていた当時、今はほとんど観られなくなった砂地の石灰質海藻群落にしばらくの間居続けてくれた↓この子は……
…おそらくホソフウライウオだろうと思われる。
一昨年(2018年)10月の台風後に、分解が進んで朽ちかけている陸上植物の葉のわきにたたずんでいた子も……
ホソフウライウオ……なのだろう。
このテのたまに出会う小型で透明感があるやや貧相な子は、これまでずっとカミソリウオの若いオスだと思っていた。
でもよくよく考えると10月に小さな若魚ってのは、タイミング的にそぐわない。
カミソリウオにはゲストをご案内中にちょくちょく会っているものの、カメラを携えていないから記録に残している数は、出会った数に比べると圧倒的に少ない。
なので手元の写真が少ないというだけで一概には言い切れないのだけれど、いずれにしてもホソフウライウオらしき子に出会った回数はかなり少ないはず。
ところがこのたび、オタマサが過去に撮った写真を振り返っていたところ、2012年の11月にビーチで撮影された、怪しいカミソリウオ系の写真を発見した。
撮影当時はホソフウライウオの存在などまったく忘却の彼方に去っていたから、フツーにカミソリウオ認定していたこのペア、一連の写真を観てみると……
ペアの泳ぎっぷりが、普段よく観るカミソリウオと随分違って見える。
また、卵嚢機能に特化しているメスの腹ビレも、よく見るカミソリウオに比べるとやや小さい気がする。
これらをもってホソフウライウオ認定するのはいささか根拠薄弱牽強付会我田引水気味ではあるけれど、だからといって
「いや、これはホソフウライウオではありません」
と、写真を観ただけで力強く断言できるヒトなんておそらく日本で3人くらいだろう。
なのでとりあえずホソフウライウオということにしておこう。
こうして自分たちで撮った写真はあらためて見直すことができるのだけれど、昨年以前にご案内中に出会っているかもしれないホソフウライウオについては、ワタシはすべてカミソリウオと紹介しているはず。
お手元に写真記録が残されているようでしたら、ご確認のうえ訂正しておいてください。