全長 25mm(オトナになると5〜6cm)
2017年の梅雨時のこと。
普段よく訪れる砂地の根に行ってみると、ケラマハナダイのメスが妙な魚にクリーニングケアされていた。
はて、コガネキュウセンがクリーニングとは珍しい。
クリーナーフィッシュとして有名なソメワケベラの仲間たち以外にも、ベラは主にその子供時代にわりと他の魚をクリーニングすることがよくある。
でもコガネキュウセンといえば、↓このようにいつも砂底で餌を漁っているのが定番。
そんな魚がクリーニングだなんて……(※たまにクリーニングをすることはある)
…と思ったら、よく観るとこの魚、コガネキュウセンじゃない。
たまたま通りかかってくれたコガネキュウセンのチビターレと比べてみれば一目瞭然、黒点の位置が全然違う。
後刻調べてみたところ、このベラはフタホシキツネベラの若魚であることがわかった。
フタホシキツネベラはアクアリウムの世界では人気がある魚のようで、ネット上には水槽内で撮られた写真が数多く出回っている。
フィールドで撮影された写真も散見されるものの、その撮影地はたいてい季節来遊漁として流れ着く内地の海で、沖縄など暖かい地域で撮られた写真が見つからない。
ということは、おそらく沖縄ではそんなに観察例はないはず。
フタホシキツネベラがよく観られる伊豆や周辺離島での観察報告によると、特に幼魚はクリーニング行動をするようだ。
たしかに水納島で出会ったフタホシキツネベラも、そのクリーナーとしての仕事ぶりはとても腰掛けシゴトどころではなく、けっこう真剣にケラマハナダイのケアをこなしていた。
ケラマハナダイのメスの身の委ねっぷりを見ても、その信頼度がうかがえる。
彼女のケアが終わると、続いてキンギョハナダイのオスを…
キンギョハナダイが終わると、今度はカシワハナダイも。
その働きっぷり、なかなかに玄人裸足である。
知られざる一生懸命クリーナー、フタホシキツネベラ。
しかしその2日後に訪れてみたときには、クリーニングの「ク」の字も気配を見せてはくれなかった。
玄人の度を越しすぎて、気が向かなきゃ仕事をしない気難しい職人とか??
残念ながらこのフタホシキツネベラの若魚は、その後の成長ぶりを観ることなく、このとき数度の出会いのみで終わってしまった。
2019年11月現在、水納島でただ1匹確認されているのみという意味では、まぎれもなく……
※「珍」マークは3つが最上級です
※追記(2021年7月)
初めての出会いから3年後の2020年6月に、再びフタホシキツネベラのチビが現れた…
…のをオタマサが見つけた。
前回と同じような水深の同じような根にいたそうで、3年前の子とほぼ同じサイズだったそうだから、まったくの別個体であることは間違いない。
我々史上2匹目のフタホシキツネベラだ。
けれど残念ながら、さほど時を置かず再訪したところ、早くもGone…。
2度目はあっけなくも儚い束の間の邂逅で終ったのだった。