全長 20cm
水納島では、どこでも普通に見られるなんの変哲もない魚、フタスジタマガシラ。
砂底やサンゴ礫が混じるリーフ際の浅い海底の少し浮いたくらいのところで、進んでは停まり、進んでは停まりを繰り返している姿をよく観る。
そしておもむろに下を向いたかと思うと……
ズボッ……
…と鼻先を砂中に突っ込み、すぐに元に戻っては、モグモグしつつエラから砂を吐き出す。
ときには砂中から引きずり出した、うどんのような得体のしれないモノをズルズルと飲み込むことも。
フタスジタマガシラたちは、砂中の小動物が大好物なのだ。
その嗜好を利用して、彼らと遊ぶ方法がある。
わざと砂を巻き上げてやると、フタスジタマガシラは「チャンス!」とばかり、すぐさま駆け寄ってくる。
これはけっして餌付いてしまっているわけではなく、ダイバーが砂を巻き上げていくということを経験上知っているフタスジタマガシラとしては、いわばダイバーの習性(?)を利用している、といったところ。
そのため砂地で潜る初心者ダイバーの後ろには、フタスジタマガシラの姿をよく見かける(ビギナーの方は、海底の砂を巻き上げながら泳ぐことが多いため)。
フタスジタマガシラは、なにげに逞しいのだ。
そんな彼らの2cmに満たない幼い頃の姿は↓こんな感じ。
3cmほどになると…
面影はあれど、知らなきゃとても親子だとは思えないフタスジタマちゃんチビターレ。
オトナ同様単独で暮らしているチビターレは、毎年初夏頃になると、リーフ際のあちこちや砂地の根の脇のそこかしこで見かける機会が増えて来る。
4cmくらいになると…
背ビレの黒斑は小さくなる。
さらに成長すると…
ケガのためか模様が乱れてしまっているけれど、このあとオトナへと変遷していくことが想像できるくらいくらいになっている。
ところで、子供の頃はその背ビレの黒斑を防御用に役立てているのか、ヒレを広げていることが多いフタスジタマちゃんたち。
ところがオトナになると、ヒレは閉じていることのほうが多い。
それでも、食事中に他の魚が無遠慮に近づいてきたりすると(近づいてきたシロタスキベラは、おそらくフタスジタマガシラのおこぼれ狙い)……
パッとヒレを広げて緊張感を漲らせる。
その背ビレにはもう、幼魚の頃にあった黒斑が完全に消えているのだった。
※追記(2020年6月)
今年(2020年)4月、砂地をひととおり巡ってリーフ際に戻ってくると、フタスジタマガシラが不自然なくらいにやたらと集まっていた。
画面に入りきらないものも数匹いて、総勢8匹くらいがかなり狭い範囲で一堂に会していたのだ。
フタスジタマガシラといえばたいてい単独、もしくは近くに数匹まばらに居るくらいだから、タマガシラパーティでも始まるのかとビックリした。
そこで集まっている全員というわけではなかったけれど、お腹がパンパンに膨れているものが目立った。
おそらくこれは卵だろう。
ってことはこの集まりは、繁殖にかかわるイベントだったのだろうか?
聞くところによるとフタスジタマガシラは雌性先熟の性転換をするということながら、フタスジタマガシラに限らず、〇〇タマガシラと呼ばれる魚たちがどうやって繁殖しているのか、それが昼間なのか夕刻なのか日没なのか朝なのかということすら全然知らない。
このままずっとこの集まりを観続けていれば、その謎が解明されたかも……。