水納島の魚たち

イチモンジブダイ

全長 35cm(写真は3cmほどの幼魚)

 今さらながらではあるけれど、そもそも似たものばかりのブダイ類のチビチビたちのこと、ワタシが100%の自信を持ってその種類だと断言できるのはイロブダイのチビくらいのもの。

 あとはもう、当たるも八卦当たらぬも八卦。

 とりわけ体に白いストライプが走るタイプのチビチビは、撮ったところでいったい誰のチビなのか、見当はついても決め手がまったくない。

 冒頭の写真のチビも、いろいろと見比べてみてイチモンジブダイのチビターレではあるまいか…と思いはしても、ではどこがどう?と問われると静かに首を垂れるしかない。

 このように極めてあやふやな場合、

 おおむねイチモンジブダイ、一時ハゲブダイ、ところによりアオブダイでしょう…

 …なんて沖縄の天気予報のようにテキトーに書ければ楽なんだけどなぁ…。

 ちなみに、冒頭の写真がイチモンジブダイのチビターレなのではないかと思う理由のひとつは、もう少し育った状態と思われる↓こちらのチビの存在だ。

 この2枚の写真は2年前(2019年)に同じ場所でほぼ同時刻に撮ったものなんだけど、2匹いたものをそれぞれ撮ったのか、同じ個体の色味がサッと変わったものだったかの記憶がまったく無い。

 でも中央の白点の感じからして、同一個体の気配が濃厚だ。

 いずれにせよ、うっすらストライプからストライプが無くなるこの感じは、イチモンジブダイ率がグーンとアップする。

 尾ビレや背ビレの端が黄色っぽいところなど、この確率がグーンとアップしたイチモンジブダイらしきチビがもっと小さな頃……っぽいでしょう?冒頭の写真のチビターレ。

 さらに成長すると……

 もうひと声…

 この流れで見ると、成長とともに体側中央の白点は消失するかのようだけど、これよりもさらに育ってメス色になると…

 白点はちゃんとある。

 どうやら白点は出し入れ(?)自在のようだ。

 白点だけじゃなく体色そのものも瞬時に変えられる彼女たちのこと、観ている間にメスも気分次第でサッと色が変え、砂底付近でエサを物色している時などは……

 かなり淡くなっている…というか、まったく別の種類かと見紛うほど。

 その際には基本的に、白点を黒点に変えている。

 もっとも、点の色はいずれであれ、全体的には地味地味ジミーなイチモンジブダイのメスである。

 一方、30cm超になるオスは……

 かなり鮮やか。

 こうしてチビからずっと地味地味カラーの変遷をたどってくると、「ブダイ」だというのになんだかとっても美しく見える。

 「ブダイ」、オトナもけっこう楽しいかも…。

 ところで、チビターレの頃はナリが小さいからとにかくビビリだけど、個体数が多くダイバーともしょっちゅう会っているであろうオトナはダイバーをさほど恐れないから、イチモンジブダイはリーフ際で必ず会え、お近づきにもなりやすいブダイのひとつでもある。

 おそらく水産資源として際立って重宝されるわけでもなく、被写体としてカメラを向けられることなど一生で一度あるかないかくらいであろう彼らとしては、「ダイバー=自分と関係ない生物」と思っているのかもしれない。