全長 15cm
ケラマハナダイ同様カシワハナダイも、水納島では砂地のポイントでしか観られない。
基本的にケラマハナダイと同じようなところで見られるけれど、カシワハナダイのほうがやや深めというイメージ。
海中で見るその色は、茶色っぽく見えて今ひとつ派手さに欠ける。
ところが茶色に見える部分の実際の色は、けっこう鮮やかな赤だ。
ストロボなどで光を当てると、本来の姿で観ることができる。
これが通常色。
通常の体色もとても美しいけれど、カシワハナダイの魅力はなんといってもオスの婚姻色(一番上の写真)で、どうしてもこういう色になってしまう写真とは違い、海中で見るその色は、青白い炎のように輝いて見える。
真夏の高水温以外の時期に、婚姻色を表したオスは、激しくメスの前でアピール(Uスイミング)するため、めまぐるしく泳ぐ。
一方メスは、やはり海中で観ると茶色く地味に見えるけれど、茶色く見える部分の実際の色は、派手なくらいに赤い。
これは卵でお腹がパンパンになった状態で、通常はもっとスマート。
通常色のオスと比べてみると……
左がオスで、右がメス。
普段のファンダイビングで訪れる砂地の根で観られるカシワハナダイは、他のハナダイ類同様やはり随分減ってしまったけれど、ダイバーが訪れることなどほとんどない根に行ってみると、たまにカシワハナダイ密度が高いところもある。
畳1畳ほどの根にいるハナダイ類のほとんどがカシワハナダイで、メスが根の近くにいる一方、オスは根からちょっと離れたところで集まっていた。
15年前の水納島なら当たり前だったこんな風景も、今やすっかり貴重なシーンだ。
だからといって、ではダイバーが訪れないところなら減っていないのかというとそうでもなく、その昔はとんでもなくハナダイ類が群れていた水深30m超の禁断の根ときたら、今行くとハナダイ類がショボくいる程度で、昔日の面影は微塵もない。
ハナダイ類、なにげに絶滅危惧種かも。
さて、オスが青白い炎となって頑張り、メスも期待に応えた結果、やはり初夏あたりから幼魚がコジャンと増えてくる。
にぎやかだからついつい全体を観てしまいたくなるのをグッと堪え、1匹1匹に注目すると、これまたその色彩にはオトナとは違う味わいがある。
もう少し成長すると…
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ちょっとオトナに似てくる。
これくらいのサイズになると、根の周りは子供たちでいっぱいになる。
このまま順調に増えていってくれれば…
…と毎年願いはするものの、世の中同様海の中もそんなに甘くはない。幼魚がオトナになる道は険しいのである。
なかにはこんなトラブルに見舞われている子も……
胸ビレの付け根に、群がる寄生虫が!!
普通このテの寄生虫は、ハナダイ類やイトヒキベラなど活発に泳ぎ回る魚には着かないモノなのに……。
いったい彼女になにがあったのか。
オトナへの道のりは険しい。