全長 5cm
タテジマヘビギンポほどではないけれど、このカスリヘビギンポもわりと簡単に見つけることができる。
ハマサンゴやウスコモンサンゴなど、塊状もしくは被覆状のサンゴの上にチョコンと乗っていることが多い。
注目していると、ふとしたはずみにイバラカンザシに乗っかることもあれば……
豪快にアクビをすることもある。
注目するとけっこう楽しいカスリヘビギンポなのに、タテジマヘビギンポほどパッと見カラフルではないので、ダイバーにはスルーされることが多い
でもやはりじっくり観てみると、透き通る体に色とりどりの斑点が散りばめられている様は、派手すぎずショボクなく、なんだかとってもおしゃれに見える。
じっくり観て初めてわかる美しさのこのギンポは、実はプレデターでもある。
ジッとしていたカスリヘビギンポが、サッとダッシュしてファインダーからいったん消え、再び元いた場所に戻ってくると、その口の中に何かいる。
ん?
これはひょっとして……
……キンギョハナダイの幼魚だった。
普段サンゴの上にチョコンと載っているのは、ただ景色を眺めているだけではなかったのだ。
水温が温かくなり始める5月半ば過ぎくらいから夏にかけて迎える繁殖期には、やる気モードになったカスリヘビギンポのオスは、普段と随分異なる色合いになっていることがある。
とてもカスリヘビギンポとは思えないほどに、情熱的に赤く色づく婚姻色だ。
オスがこのやる気モードになっていると、その近くにはたいてい…
…メスの姿が。
このように口を開け、なおかつ腰をクネクネさせているときにどうやら卵を産んでいるらしい。
そのお腹の下を観てみると…
わりと太い輸卵管がビヨ〜ンと突き出ている。
この輸卵管の先から卵を産むわけだけど、岩肌をきれいに掃除してからビッシリと卵を産みつけるクマノミ類とは違い、このテのヘビギンポたちは岩肌の付着生物に隠れるように一粒ずつバラバラに産んでいるため、産んでいるところを見ても「どこに卵が?」てなことになる。
それでも目を凝らして画像を見てみると、矢印の先の玉が卵っぽい。
で、メスが何粒か産むたびに、オスがメスのところに来て…
卵に受精させる。
ただし↑このようにオスとメスが寄り添っている「時間」はそれほど長くはない…というかむしろ一瞬で、しかもどっち向きにオスが来てくれるのか定まっていないため、往々にして↓こういう写真になったりする。
メスが産卵するのに合わせ放精していると思われるオスの動きは、↓こんな感じ。
1回1回は案外短時間なオスのシゴト。
圧倒的に早打ちのジョーではあるけれど、動画も何度も何度も撮っていたくらいだから、相当長時間に渡る連射状態と思われる。
なにげに絶倫のカスリヘビギンポ、赤いやる気モードは伊達ではなかった。