全長 20cm(写真は4cmほどの幼魚)
オトナもチビターレも、スミツキベラと似たようなところで暮らすケサガケベラ。
暮らしの場だけではなく体色の基本的なデザインもそっくりで、チビターレの頃は黒っぽい体に点々が散りばめられている。
もっとも、ケサガケベラ・チビターレはその点々が黄色いから、ひと目で違いはわかる。
水納島の場合、オトナもチビもスミツキベラに比べると個体数は少なく、チビに出会う機会も少ない。
ただ、立派なオトナサイズになるまでは行動範囲はさほど広くないので、1度チビもしくは若魚に出会えば、再訪するとたいてい同じ場所で会える。
成長に伴う体色の変化もまたスミツキベラと似ていて、オトナになると↓こうなる。
まだ10cmほどのチビオトナ。
この写真だとスミツキベラから「墨」を取っただけのような塩梅だけど、もっと成長して20cmくらいになると…
黒い袈裟がかかっているように見えるその名の由来がハッキリしてくる。
ダイバーの姿を察知したからといって遠くまで逃げたりしないケサガケベラながら、チビもオトナも暗がりの下で岩肌の付着生物をロックオンしてはゲットしているから、オーバーハングしている岩肌にいるところをフツーに見ると、↓このように見えてしまう。
その点、底付近をウロウロしてくれていれば…
ちゃんと横から観ることができる。
待っていれば底に降りてくれるとはいえ、20cmくらいのオトナになると行動範囲はけっこう広く、底に降りてくれるまで一緒に泳いでいると、リーフ沿いに随分遠くまで付き合わされることもある。
ケサガケベラたちもスミツキベラと同じく、日中岩陰でジッとしているタイプの魚たちにはクリーナーとして認識されているようで、20cmクラスの立派な大きさのケサガケベラでも、そばを通りかかると……
アカマツカサはついつい、クリーニング催促のために口を開けてしまうのだった。
この時のケサガケベラはクリーニングをする素振りを見せなかったから、この大きさになってもクリーニングをするのかどうかは不明ながら、スミツキベラのケースを考えると、きっと普段からフツーにクリーナーになっているのだろう。
※追記(2020年10月)
今年(2020年)9月に、幼魚模様からオトナの体色へと移り変わる途中段階になっているチビと出会った。
変態社会御用達の「ベラ&ブダイ図鑑」では、ケサガケベラの中間段階の写真は著者以外の方の写真が使用されている。
このことからみても、この中間段階の模様を呈した子との遭遇チャンスの少なさがうかがえる。
このラッキーチャンスは、ある意味、一生に一度級かもしれない?
その2週間後、再びこのチビがいるところを訪れる機会があったので、その後の様子を見に行ってみた。
すると……
ところどころに幼魚時の黄点模様の名残りを見せつつも、ほぼほぼオトナ模様に変わっていた。
個体数が少ないケサガケベラの幼魚が、同じ場所に何匹もいるとは思えないから、ほぼ間違いなく2週間前のチビと同一個体だろう。
ということは、たった2週間でここまで体色が変化したということになる。
もっとも、オトナ模様になりかけてはいても、サイズはほとんど変わらず5cmにも満たない。
ケサガケベラのオトナといえば、フツーサイズのホシゴンベよりも大きいのだけれど、このチビオトナはというと……
遥かに小さい。
何がきっかけでオトナへのスイッチが入るのかはよくわからないけれど、ともかくたった2週間でこのように変化するということは、明らかな中間段階だった2週間前の出会いが、いかに千載一遇だったかよくわかるのだった。