全長 15cm
2009年の真夏に、おそらくは岩場のポイントで撮った↓この黄色いハギを…
恥ずかしながらワタシはずっと、ゴマハギの黄化個体だと信じていた。
何を根拠にしていたのか、今となってはすっかり記憶から欠落している。
かつて持っていた図鑑その他によるのか、それともキイロハギは中部太平洋が主分布域だから沖縄にはいないもの、と思い込んでいたのか。
ちなみに、「キイロハギの群れ」で画像検索してみると、目を疑うような真っ黄色の群れの写真をいくつも観ることができる
それらの多くはハワイで撮影されており、かの地では海岸近くの浅いところで、サルでも観られるほどにフツーに群れているそうだ。
日本では、小笠原でもけっこう群れている、という話を聞いたこともある。
沖縄ではそんな群れなど観られようはずはなく、キイロハギ自体がレアで、そのうえゴマハギにはキイロハギと見紛うほどの黄化個体がいるとなれば、上の魚をゴマハギの黄化個体と信じていたのも無理はない。
< 無理はあるんじゃ……?
ゴマハギの幼魚の黄化個体だと信じていたものも、実はキイロハギだった。
体色以外に差異はないと言われるキイロハギとゴマハギ、いったいどこで区別するのかというと。
ヒミツは目にある。
キイロハギの目は虹彩(黒目の周り)部分も黄色であるのに対し、ゴマハギのそれは赤もしくは褐色になっているというのだ。
その特徴を紹介してくれている変態社会サイトがいくつかあったので、わりと広く認知されているのだろう。
でもいったいその特徴を述べた大元の大元、すなわち典拠が何であるのかがわからないから、ひょっとすると誤情報、思い込み情報が流布しているだけかもしれない。
ネット上で述べられていることを鵜呑みにしてしまうヒトが多いから、当コーナーのようにほぼワタシの独断と偏見による記述にもかかわらず、それを典拠にしているヒトがいることもある。
近年すっかり更新されなくなったオタマサの「エビカニ倶楽部」にヒメオオメアミという変態社会系の生き物がいる。
その昔、すでにアップしてあるヒメオオメアミという名前をいったいどこで認識したのか忘れてしまった頃、ホントにこの名前で合っているのかどうかすら自信がなくなり、ネット上でいろいろ探ってみたことがあった。
まだ今のように変態社会人が社会化せず、個人個人が世の片隅で蠢いていた頃のことだから、ネット上ではなかなか見つからない。
ひょっとして思い込んでいただけかも……とあきらめかけた時に、ようやく「ヒメオオメアミ」という名前を記述しているサイトを見つけた。
ホッと一安心…
…と思ったら。
そのサイトの「ヒメオオメアミ」の名前の典拠は、なんとすでにアップしてあった当サイト「エビカニ倶楽部」の当該ページなのだった。
そういうこともあるので、あらためてお断りしておかねばならない。
ここで記している内容、ひょっとするとウソかもしれませんのでご注意ください。
以上を踏まえつつ、過去に撮った写真をふりかえっていると、驚いたことにまた別の幼魚にも出会っていた。
オトナの写真は2009年、その次の幼魚の写真は2014年、そしてこの子は2018年に、それぞれ別の場所で撮った写真だ。
これまでの24シーズン(2019年1月現在)の間、水納島にはいないと信じていたキイロハギに、少なくとも3度出会っていたのだ。
ああ、出会ったその時にヨロコビを感じていたかった……。
仮に……万一……たとえ…この子たちがすべて実はゴマハギキレンジャーだったとしても、少なくともレアであることには変わりはない。
にもかかわらず、これらの写真を撮ったとき、出会ったときに喜んだ記憶がまったく無い。
ひょっとすると昔は、「フツーにいる感」を持つほどに、わりとちょくちょく黄色いゴマハギ(と信じていたハギ)に出会っていたのだろうか?
リニューアルする前のゴマハギの稿の記述を読んでみると、黄色いゴマハギの存在について、さほどレア感を訴えていない。
やっぱり昔は今よりも頻度高く出会っていたのかなぁ…。
今となっては掘り出すことなど不可能なほど、記憶は忘却の地底深く埋もれてしまっているのだった。
※追記(2020年4月)
この稿をアップしてから迎えた2019年のシーズン、キイロハギに注目していたせいか、思いのほかそこかしこでその黄色い姿を目にすることができた。
さすがにゴマハギのようにそこらじゅうにいるわけじゃないけれど、出会えたからといって目を見張って驚くほどのものではないらしい…。
ただ。
その年の初めにオタマサがとある砂地のポイントの根でキイロハギのチビを見つけていた。
オタマサによると、この冬の間ずっとこの場にいるそうで、当初はまだ幼かったこともあり、近づくと物陰に隠れてばかりいたという。
ちょうどキイロハギで盛り上がっていた頃だったので、さっそく春に見に行ってみると……
いた。
冬を越してそれなりに成長し、カメラを向けるといったんは逃げるものの、根における行動範囲はだいたい決まっているようで、待っていると同じ場所にすぐに戻ってきてくれる。
それにしても、ゴマハギやキイロハギといったこの系のハギは、こんな砂地の水深20m超の根ではフツーは観られない。
きっと何かがどうにかしてここで暮らすことになってしまったのだろう。
丸っきりのオトナになるまで居てくれるか?
それとも行動範囲が広がって、本来の生息場所に移っていくのか?
もともと彼らが住むのに適した環境ではないから、あっという間に居なくなってしまうのだろうなぁ…
…と覚悟していたところ、2019年のシーズン中は結局ずっと居ついてくれていて、年も押し詰まってきたクリスマス前に行ってみると……
健在。
まるっきりのオトナにはなっていないものの、半年経って随分逞しくなった気がする。
年が明け、さらに3ヵ月後に訪れてみると……
季節外れにやたらと群れていたクロスジスカシテンジクダイをバックに、貫禄を増した姿で健在だった。
大きくなって行動範囲も広がってきたのか、昨春に比べると根から随分離れたところまで泳いでいる。
そろそろオトナの仲間入り、伴侶を求めて旅立つ日も近いかもしれない。