全長 4cm(写真は3cmほど)
コビトスズメダイの分布の中心はミクロネシアの島々から小笠原にいたるあたりだそうで、そのあたりでは当たり前に群れているという。
けれど他の地域ではかなりレアということもあり、公式に「日本産」と認定されて和名がつけられたのは随分遅く、それまではミジェットクロミスという英名が通称になっていた。
ヒメスズメダイにそっくりなミジェットクロミス、いる場所もきっとヒメスズメダイと似たようなものに違いない。
ヒメスズメダイはフツーにいるのだから、ひょっとしたら水納島にだってミジェットクロミスが1匹くらいはいるかもしれない。
…と、水納島に越してきた95年からこっち、ずっとずっとずっと出会いを求めてきたのだけれど、これがさっぱり、まったくいないときたもんだ。
ときどき「おっ?」と盛り上がりかけては、それがヒメスズメダイのチビだとわかって「はぁ…」となってばかりいた。
そんな「おっ?」「はぁ…」「おっ?」「はぁ…」を繰り返すこと26年、まだ水温が低い2月(2021年)の海でのこと。
水深15mほどの砂地の根に生えているソフトコーラルに寄り添うその姿は……
…コビトスズメダイではありますまいか!?
過去最大級の「おっ?」!!
これで「はぁ…」となったら、もう二度と立ち直れないかもしれない。
気持ちを静めてとりあえずパシャ。
これはもう、誰がどう見てもコビトスズメダイだ。
ついについに初遭遇!!
とはいえヘタをするとこれが人生最初で最後かもしれない。
ヒレ全開やアクビ、正面その他、この際パシャパシャ100枚くらい撮っておこう……
…と思ったら、なんてことだ、ソフトコーラルの向こうに隠れたコビトスズメダイは、そのまま消えてしまった。
反対側に回ってサーチしてもどこにもおらず、待てど暮らせどその後2度と姿を見せることはなかった。
ひょっとして……さっきからウロウロうしているニジハタに食べられちゃったとか?
水深15mほどの砂地の根なんていったらコビトスズメダイが本来暮らす環境ではないのだろうし、いずれにせよ短命で終わっていたかもしれない。
でも……もうちょっとだけ撮らせてほしかったなぁ。
※さっそく追記(2021年2月)
コビトスズメダイとファーストコンタクトをはたした翌日、もう一度同じ場所で潜ってみることにした。
前日はその後2度と姿を現してくれなかったコビト―、ホントにニジハタに食べられてしまったのだろうか。
いや、ひょっとしたら気を取り直してまた姿を現しているかもしれない。
さっそく遭遇地点に行ってみると……
いた♪
食べられたわけじゃなかったんだ、コビト―。
ただ、群れていればそうでもないんだろうけど、たった1匹でここにいるせいか相当なビビリで、前日姿が見えなくなってしまったのも無理はないってくらいに超引っ込み思案。
時々泡をブクブク吐き出すけどとりあえず無害であることをわかってもらうべく、しばらくジッとしていたところ、ようやく姿を表に出し続けてくれるようになった。
そうなればもちろん、待つべきチャンスはといえば……
アクビちゃん。
コビト―はしっかり期待に応えてくれたのだった。
沖縄本島近海では激レアフィッシュといっていいコビトスズメダイ、いつまでここにいてくれるだろうか…。
※追記(2021年6月)
残念ながら、春になる頃には姿を消してしまいました……。
※追記(2022年5月)
翌年(2022年)4月に、コビトスズメダイと再会!
場所は2kmくらい離れたまったく別のポイントだから、2個体目であることは間違いない。
それまでずっと会えなかったのに、こうしてたて続けに会えるってことは、ジワジワとコビトスズメダイが増えているのだろうか。
昨年の砂地の根と違い、コビトスズメダイは本来こういう場所に暮らしていると思われるから、周辺にもお仲間がいるかも…
…と探してみたものの、少なくとも彼の半径10m周辺では、完全無欠のロンリーオンリーワンだった。
水納島でもコビトスズメダイが繁殖…というシーンは、まだ相当先のようだ。