水納島の魚たち

コジカイソハゼ

全長 2cm

 肉眼ではむろんのこと、写真で見たって凡百のシロウトのワタシにはアオイソハゼにしか見えないこのイソハゼ。

 しかしアオイソハゼとは別の種類である、ということは、2004年に世に出た「日本のハゼ」(初版)以来、多くのハゼ変態社会人の知るところとなっていた。

 ただし当時はまだ和名が無く、「イソハゼ属の1種」の4番目という、科学的には正しくとも実に無機質な呼称でしかなかった。

 一方で、いち早くこのハゼの存在に気づいておられた極めつきのハゼ変態社会人さんは、コジカのバンビのような模様からコジカイソハゼという通称を唱えていて、結局その通称が新和名として採用されることとなったそうな。

 それがもう10年も前(2012年)のことなんだけど、恥ずかしながらワタクシ、そう言われてもあーそーですか…としか言えない見えない聞こえない。

 だってアナタ、フツーに見たらアオイソハゼじゃないですか、これ。

 でも図鑑に記されているその特徴を踏まえれば、かろうじて写真でなら区別がつきそうだ。

 チェックポイントその1:体側の赤点

 アオイソハゼでは、小さな赤い点が体の上側に偏るのに対し、コジカイソハゼではほぼ満遍なく点在する。

 チェックポイントその2:白点の数

 どちらも背骨に沿って白い破線模様があるのだけれど、胸ビレの上から尾ビレの付け根まで、アオイソハゼが7個なのに対し、コジカイソハゼは8個ある。

 チェックポイントその3:虹彩の裏の白線

 その線が途切れるアオイソハゼに対し、コジカイソハゼは途切れない…そうなのだけど、その虹彩の裏の白線とやらがいったいどの線のことなのか、よくわからない。

 というわけで、大事なチェックポイント3つのうち1つは不明ながらも、とりあえずその1その2でなんとかなりそうなのでまぁいいか。

 いずれにせよ、コジカイソハゼと認識して撮ったことなど一度も無いから、はたしてアオイソハゼとコジカイソハゼではどっちが多いのか、居場所はどうなのか、といったことは感覚としてまったくない。

 世間ではどちらもフツーにいる扱いのイソハゼなので、きっと水納島でもコジカイソハゼはフツーに観られるのだろう。

 存在を知らないまま撮っているのはオタマサも同様ながら、では何イソハゼなのかということすら気にも留めないまま、それと気づかないままやる気モード状態を撮っていた。

 顎のあたりが武張っているのはバトルモードだったためで、すぐそばにもう1匹オスらしき背ビレの長い子がいる。

 聞くところによると、メスに求愛する際にはもっともっと発色するというコジカイソハゼのオス。

 春がチャンスのようなので、今春はそのあたりに注目してみたいところながら、モンダイがひとつ。

 このやる気モードのイソハゼ、ホントにコジカのバンビちゃんなんでしょうか?

 チェックポイントその1の赤点は背筋に沿って1列あるだけで、体側に見えるのは赤点というより鱗の縁が彩られている。

 それは興奮モードの特徴だとしても、チェックポイントその2の白点は、数えようによっては8つといえないこともないけど、尾ビレ付け根あたりの最後の点がなんか違う…。

 コジカじゃないならいったい誰?

 興奮モードが醒めるところまでずっと観ていれば何かがわかったかもしれないところ、オタマサは「おっ、ヒレを広げてる…」というだけの視点で撮っただけだから写真はこれだけ。

 まぁ種類はなんであれきれいだから、モンダイは棚上げにして春の楽しみにしようっと。