全長 8cm
2019年6月のこと。
事前情報的に特に何がいるというわけでもない水深30mほどにある砂地の根を訪れてみると、水深を問わずどこにでもいるキンセンイシモチの集まりの中に、冒頭の写真の子が1匹だけ混じっていた。
サイズ的にまだチビターレのようだ。
目元の青いラインといい、尾柄部の黒マークといい、わりと体高があるところといい、アオスジテンジクダイのチビターレと即断。
アオスジテンジクダイのチビターレなんてなかなか撮る機会が無いから(ゲストとともに観る機会はある)、この際とばかりにパシャパシャ撮ってみた。
で、こんなに小さなアオスジテンジクダイのチビを撮ったのは初めてかも…と目的を果たせて1人悦に入っていたところ。
実はこの魚、テンジクダイ類に注目するという変態社会ではアオスジテンジクダイの近似種とずっと言われていたものだそうで、2015年に晴れて「コンゴウテンジクダイ」という新和名が付けられた魚なのだった。
両者を見分ける際に注目すべきは尾柄部の黒い模様で、アオスジテンジクダイは幼魚でも上下の端まで繋がる帯模様なのに対し、コンゴウテンジクダイは点にとどまる。
オトナになるとこの黒点は帯に近くなりはするものの、中央部が膨らむ樽型になるから、海中でもたやすく見分けられるらしい。
主生息域はもっと南洋の海だからなのか、黒潮に乗って流れ着く季節来遊魚として本土のほうではちょくちょく観られているようながら、水納島ではこれまで観たことが(少なくとも撮ったことは)なかった……
……と思っていたら。
過去に撮った写真をふりかえってみたところ……
なんと3年前(2016年)にもこのコンゴウテンジクダイに出会っていたことが判明した。
しかもよりいっそうチビ。
当時もアオスジテンジクダイのチビターレだと勘違いしていたんだろうか。
残念ながら観た記憶も撮った記憶もまったく無いものの、写真のファイル名に記録してあるポイント名からすると、冒頭の写真を撮ったところとまったく同じ場所のようだ。
当時撮っていた他の写真も観てみると、このチビターレは、別のテンジクダイ類のチビと一緒にいた。
ほぼ同サイズながら尾柄部の黒点がないチビは、おそらくアオハナテンジクダイであろうと思う。
オトナになるとアオスジテンジクダイにそっくりになるコンゴウテンジクダイ、こうして見ると、チビの頃はアオハナテンジクダイにそっくりじゃないか。
ひょっとしてコンゴウテンジクダイって、実はアオスジテンジクダイとアオハナテンジクダイのハイブリッドだったりして??
なんだ、だから「混合」テンジクダイなのか。
< 違います。
このチビたち、水納島でオトナにまで育つのだろうか。
ちなみに今年出会ったチビターレは、オトナになって卵を口内保育することになる将来に備え、早くも顎の準備運動をしていた。
オトナになる気は満々のようだ。
※ただのアクビです。
※追記(2021年11月)
その後も依然「これぞオトナ」というところまで育っている子には会えないままでいるものの、意識するようになったからだろうか、幼魚や若魚の個体数が増えている気がする。
人生的ミニマムサイズのチビターレは↓こんな感じ。
これだけを見るとホントにコンゴウテンジクダイなのか不安になるところながら、周りには…
もう少し育ったサイズの幼魚たちが5〜6匹集まっていたから、ミニマムサイズもコンゴウテンジクダイに違いない。
それにしても、これだけコンスタントにチビには会えるようになっているのに、「ザ・オトナ」に会えないのはなぜだろう?
ひょっとして、アオスジテンジクダイと間違っていたりして…。
ちなみに↓この子はどっちなんでしょう?
尾ビレの黒帯は樽型に見えなくもないけど、周りにいた他の子たちはまず間違いなくアオスジテンジクダイの模様だったから、素直にアオスジ認定。
でもこの若い子もまたコンゴウさんなのだとすると、ワタシのなかでは随分混同してしまっていることになる…。