水納島の魚たち

クラカケモンガラ

全長 25cm

 魚の種類の区別がつかない…とお嘆きの方には、ムラサメ、タスキ、クラカケ各モンガラはすべて同じ魚に見えるかもしれない。

 こうして並べてみても違いがわからない…という方は、もうどうしようもないからそのまま我が道を行ってくだささい。

 ちなみに、歌のタイトルにもなっている有名なハワイの名前「フムフムヌクヌクアプアア」は、厳密にはタスキモンガラのことらしいのだけれど、現地ではムラサメモンガラも同様に呼ばれているそうな。

 もしクラカケモンガラの分布域がハワイにまで及んでいれば、彼らもまた「フムフムヌクヌクアプアア」と呼ばれていたことだろう。

 見分けがつかない方は、ハワイ名で是非。

 ところでこのフムフム3連星の一員であるクラカケモンガラも、ムラサメモンガラ同様インリーフにしかいないから、水納島での通常のボートダイビングでは出会う機会はまずないといっていい。

 ただ、ムラサメモンガラは海水浴場であれどこであれ、インリーフで泳げば普通に出会えるお馴染みの魚だし、タスキモンガラはリーフ上でスノーケリングしていたらけっこう出会えるのに、同じような場所で暮らしているはずのクラカケモンガラには、お目にかかった記憶がほとんどない…

 …とずっと思っていた。

 ところが今シーズン(2019年)、ゲストが桟橋まで下りてこられるのを待っている間など、暑いからボチャンと海に飛び込んで涼むついでにボートの周辺を覗いてみると、クラカケモンガラがやけに縄張りを主張しているではないか。

 繁殖期だからこのあたりまで繰り出してきているのだろうか。

 せっかくだから撮っておきたいとは思いつつも、シーズン中の桟橋脇で呑気にカメラを携えて遊んでいられるはずはなし、わずかな時間を使ってコンデジで挑んでみたものの、繁殖期のムラサメモンガラとは違い、逃げる一方のクラカケモンガラはどうしようもなかった。

 そうこうするうちにシーズンも終わり、ちょいとばかしビーチの海中を覗いてみたところ…

 あ、まだいた。

 どうやら季節にかかわらず、このあたりが縄張りのようだ。

 しかも、夏の間はオトナしか見かけなかったのに、4〜5cmほどのチビも。

 冒頭の写真も上の写真も実はそのチビで、4〜5cmにしてすでにオトナと変わらない色彩になっている。

 オトナは相変わらず逃げ足するどく近寄るのは不可能ながら、チビチビは同じように逃げはしても、逃げる範囲が限られている。

 ところどころに隠れ家をキープしているらしく、逃げながら隠れ家に入ったりもしていた。

 でもやっぱり外が気になるのか、もっと小さなモンガラ類のチビターレとは違い、すぐに出てきた。

 ネット上で散見される写真を見てみると、これよりももっと小さな頃のクラカケモンガラチビターレは、目立たないようにするための配慮なのか、随分地味な色合いになっているようだ。

 それにしても、長い間観たい撮りたいと思っていた魚が、こんなところにいたなんて。

 なにしろここですから。

 上の陰はうちのボートです。

 灯台下暗しならぬ、ボートの下暗し。

 そういえば、今年ようやく実現したムラサメモンガラのチビターレとの初対面も、停めているボートの真下だったっけ…。

 日帰り業者のボートやジェットスキーが頻繁に出入りするシーズン中のこの桟橋脇は、ある意味水納島で一番の「秘境」なのかもしれない?

 追記(2023年11月)

 クラカケモンガラと初遭遇を果たしたのち、2020年以降は諸々の事情でカモメ岩の浜でリーフ内を潜る機会が多くなった。

 するとどうだ、波打ち際から程近いところには、クラカケモンガラの姿があちこちに。

 干潮時には干出するかせいぜい足首くらいの水深にしかならない波打ち際の岩盤上には、オトナやチビが複数集まっていることも多い。

 やはりこのような浅いところが大好きなのだなぁ、クラカケモンガラ。

 たくさんいるおかげで、今年(2023年)再びチビを撮ることができた。

 本文で紹介しているチビよりもさらに小さく、お腹の黒い模様が随分丸っこい。

 もっと小さい頃だとこれがホントに丸になるらしく、そりゃきっとカワイイことだろう。

 ところで、このサイズの頃のクラカケモンガラとムラサメモンガラって、正面から見ると模様の入り方がそっくり。

 もともと体全体も似た感じの両者とはいえ、こうして見るとかなり近い仲間であることがよくわかる。