水納島の魚たち

クロダルマハゼ

全長 2cm

 トゲサンゴにいるアカネダルマハゼを探そうとするとき、アカネダルマハゼよりもまず先に目につくのが、このクロダルマハゼだ。

 クロダルマハゼもアカネダルマハゼと同じくトゲサンゴを住処にしているのだ。

 黄色味を帯びたトゲサンゴであれピンクのトゲサンゴであれ、体が黒いと目立ってしょうがないだろうに、彼らにそれを気にしている様子はない。

 というか、アカネダルマハゼを観たいのに、一緒に暮らしているクロダルマハゼがチョコマカチョコマカ動き回るものだから、お目当てのアカネダルマハゼも落ち着きが無くなる…ということがよくある。

 というのも、ひとつのトゲサンゴ群体に住んでいるクロダルマハゼは、たいていの場合大小合わせて4〜5匹くらいはいて、それぞれがお互いを牽制しあっているのか優劣関係維持のためなのかじゃれ合っているのか、いつも追いかけっこをしているのだ。

 あ、トゲサンゴの色に比して目立つように思えたクロダルマハゼ、こうして改めて静止画像で観ると、トゲサンゴの「枝間の陰の部分」に見えなくもない?

 黒い色は目立つように見えて、カモフラージュだったのかも。

 それはさておき、狭い隙間をチョコマカと追いつ追われつするからだろうか、小さめの個体の尾ビレは、ときに傷ついていたりもする。

 ヒレが傷つくほどにけっこう激しく追いかけっこをしているクロダルマハゼながら、なにしろアカネダルマハゼを観たいがためにトゲサンゴを覗いているヒトのほうが多いから、たいていの場合注目されることはない。

 かくいうワタシも、かつてアカネダルマハゼとともにクロダルマハゼもピンクのトゲサンゴに何匹もいたというのに、ピンクバックではろくろく写真に残していない。

 唯一残っていた写真は、ピンボケの顔写真だった。

 でも目にピントが合っていないおかげで、彼らの特徴であるヒゲモジャ顔がよくわかる。

 同じダルマハゼの仲間なのに、パンダダルマハゼやカサイダルマハゼの顔にはここまで目立つヒゲはない。

 ところがアカネダルマハゼやクロダルマハゼは、なぜだかヒゲモジャ顔になる。

 これはトゲサンゴに住まうモノたちに特有なのだろうか。

 でも同じ住処だと、場合によっては交雑するかもしれない。

 その結果、黄色い顔に黒いヒゲが密生しているハイブリッドが生まれたりして。

 想像してみたらかなりおぞましかった……。

 もっとも、アカネダルマハゼと同じく、クロダルマハゼもチビターレの頃はヒゲヒゲは全然目立たない。

 むしろツルツルした感があるその小さな姿を上から見ると……

 「オジャマタクシ!!」

 サツキの妹メイなら、すぐさま声を張り上げることだろう。