10cm
砂底に点在する各根の周辺で、やたらと…といっていいくらいに見られるマダラカザリハゼ。
でもこれといって特徴的な模様があるわけでも、目を引くフォルムをしているわけでも美しい体色というわけでもなく、しかもわりとでっかくていつも砂底にジッとしている。
野暮ったくパッとしないこの姿を観て狂喜するヒトは、ハゼ変態社会帝国在住者ですら珍しいのではなかろうか。
ヒトクチで言ってしまえば極めて地味なハゼ、それがマダラカザリハゼだ。
近縁のハゼもみな同じような模様で、全然別グループのサンカクハゼ類やカタボシオオモンハゼもまた似たような地味さということもあって、それらをひっくるめて「根の周りにいる白っぽいハゼ」ってことで全員同じ扱いにしているヒトもいるかもしれない。
かくいうワタシもマダラカザリハゼに格別の視線を送ったことなど一度もないのだけれど、ある時いつものように根の周りの砂底でボテッとしているマダラカザリハゼの傍にいるモンジャウミウシの姿が目に入った。
観ていると、モンジャウミウシはどんどんマダラカザリハゼに近づいていく。
ひょっとしてスミゾメキヌハダウミウシがヒメダテハゼに寄生するように、モンジャ君もマダラカザリハゼにくっつく気なのだろうか?
カイメン食のモンジャ君がハゼの体液をチュウチュウ吸うとも思えないし、そもそもデカすぎてくっつけるはずもない。
それを知ってか知らずか、マダラカザリハゼは迫るモンジャ君をまったく気にするふうもなく、接触を許しているようだった。
なんと広い心の持ち主だろう…。
これまでずっと脇役以下の存在だったマダラカザリハゼを観る目が変わった。
生まれ変わった目で観てみると、若い個体は美しさを湛えているようにさえ見え…
…ていたのは、モンジャ君に対する寛容な精神を見せてもらった2009年からしばらくの間までのことで、いつの間にやらワタシの眼はすっかり元に戻ってしまっていたのだった。
砂底環境ならいつでもどこでも出会えるマダラカザリハゼ、たくさんいるうちにちゃんと会っておかないと、居なくなってしまってからではもう遅い。
いつまでも いると思うな マダラカザリ。
って、ずっと居そうな気もする…。