水納島の魚たち

ミナミウシノシタ

全長 25cm

 アマミウシノシタよりも三周りほど小さいミナミウシノシタには、蛇の目模様がビッシリ並んでいる。

 でも砂底でジッとしているときは、こんな感じで砂に埋もれている。

 同じように砂に埋もれて隠れているアマミウシノシタは、そこに至るまでの這い跡を残してくれていることも多いのでわりと発見しやすい。

 一方ミナミウシノシタは這い跡が残りにくいのか、かろうじて魚体の輪郭が見えるだけだから、この魚の存在を知らずにいたら、その輪郭が魚だとはとても思えないかもしれない。

 下の写真にはミナミウシノシタが合計3匹いるんですけど、わかりますか?

 幸いにしてミナミウシノシタはアマミウシノシタに比べ、最初から体表を隠していない状態を観る機会が多く、砂をかぶっているといってもチョロッとだけだったり…

 背ビレや尻ビレをヤスデの脚のようにゾワゾワ動かし、体表全公開で砂地を這い進んでいることもよくある。

 とはいえこの蛇の目模様とその色合いは隠蔽効果抜群で、ちょっと目を放しただけでどこにいたんだかわからなくなるほどだ。

 それなのに彼らときたら、カモフラージュだけではなくさらなる防御機構をも備えているという。

 ミナミウシノシタの体表の粘液には強力な毒が含まれているそうで、2000倍に薄めてもハゼやボラなどは20分で死ぬ、と図鑑に書いてある(水槽内の話)。

 放っておいても見つからないのに、どうしてそのような強力な毒が必要なのだろうか…。

 ちなみにミナミウシノシタの目は、蛇の目模様に紛れるようになっているから、どこに眼があるのかわかりづらい。

 彼らの目はここにあります。

 体のわりに、なんとも申し訳なさそうに小さな目。

 鼻孔の管(矢印の先)がなんだかヒョットコの口に見えて、そう思って眺めるとすっかり変な顔になるミナミウシノシタである。