全長 6cm
名前も姿も色もよく似た魚に、ミスジリュウキュウスズメダイというのがいる。
そちらの方がメジャーな存在でもある。
なにしろ光り輝く浅い海で枝サンゴに群れ集う姿は絵になる。
それに対し、本種はサンゴに群れ集うようなことはせず、砂地に点在するささやかな小岩に2〜3尾がひっそりと暮らしている。
その暮らしぶりが姿にも反映するのか、ミスジリュウキュウに比べて清楚で可憐だ(※個人の感想です)。
幼魚が増える季節を除き、一カ所にたくさんいないため、一見少ないような気もするけれど、砂地のそこかしこで見られる。
たとえ近くに大きな根があってもけっしてそこには住まず、砂底にポツンと転がるささやかな岩にしか住まないところからして、彼らは都会的コミュニティが嫌いなのかもしれない。
彼らがどれほど小さな拠り所を好んでいるか、如実にわかるシーンが。
ロープの擦り切れ防止用によく使われる太い蛇腹のホースが、朽ちて海底に落ちていた。
強い流れや台風の巨大なうねりなどがあればひとたまりもなく他所へ流されそうなこのホースを、ミスジスズメダイたちがこれ幸いとばかりに住処にしているのだ(ホースの口が大きく欠損しているために、出入りしやすいらしい)。
なにもわざわざこんなものを拠り所にしなくても……。
たとえ波の転がる住処でも、他者との交わりが無い分住み心地がいいのかもしれない。
水温が低い間はなかなか近寄らせてくれないけれど、温かくなってくるとちょっとやそっとじゃ穴に逃げ込まないようになり、いつしかチビターレの数も増えていたりする。
GW頃から増え始めるチビターレがまた、清楚度3倍増しで可憐かつ可愛い(※個人の感想です)。
写真は2cmほどのチビターレで、小さい頃は真ん中の黒い帯が腹ビレまで伸びている。
成長するとこの腹ビレの黒色は薄くなっていき…
やがて純白になる。
これはこれでまた可憐。
可憐なミスジスズメダイたちではあるけれど、ずーっと観ていたら…
…たまにアクビもしてくれる。
※追記(2023年11月)
水納島の砂底ではお馴染みのミスジスズメダイではあるけれど、オスがメスにどうこうするとかメスが産卵するといった繁殖行動については、これまでなかなか遭遇チャンスがなかった。
ミスジスズメダイって、そもそもどこに卵を産んでいるのだろう?
その答のひとつが、これ。
砂底に転がって幾星霜…のビン。
やたらと大きなミスジスズメダイがビンから出入りしていることに気がついたオタマサが、さては…と覗き込んでみたところ、卵を確認することはできなかった…
…肉眼では。
撮った写真を後刻PC画面で見てみると…
ビンの口の奥部の縁に沿って、キラキラオメメの卵が並んでいることが判明した。
なにしろ卵に気がついて撮っているわけではないからピントもたいがいではあるものの、一応拡大。
大きなオスは、このキラキラオメメの卵をケアしていたのだ。
ビンの肩あたりにはもっとたくさんの卵がビッシリしているのか、それともほぼほぼ孵化して残るはこの列だけになっているのかは不明ながら、ミスジスズメダイの繁殖生態の一環を初めて確認することができたのだった。
本文中で紹介している朽ちかけた蛇腹ホースも、産卵床としては格好のアイテムだったに違いない。
とはいえビンも蛇腹ホースも思いっきり人工物、そうそう都合よく砂底に転がっているものではない。
ではこういうゴミが落ちていなかったら、彼らはいったいどこに産むのだろう?
砂底にチョコンとあるハンドボール程度の石を拠り所を住処にしているミスジスズメダイのこと、産卵床になりそうなものといえばせいぜいそれらの石くらいのもののはず。
彼らが普段逃げ隠れする際に利用しているその石の裏側こそが、大切な産卵床になっているのかもしれない。