水納島の魚たち

モンダルマガレイ

全長 40cm

 水納島の砂底でしばしば出会うカレイといえば、トゲダルマガレイがおなじみだ。

 でもその昔の世の中に出回っていた一般向けのポータブルな図鑑では、よく似てはいるもののちょっとばかり様子が異なるモンダルマガレイは載っていても、トゲダルマガレイまで載っていることはまずなかった。

 そのためモンダルマガレイという名前を先に覚えてしまい、トゲダルマガレイのことをモンダルマガレイだと誤解していた時期もあったりする。

 その後ようやくトゲダルマガレイの存在を知り、以後ずっとトゲダルマガレイとは長い付き合いになっているんだけど、先に名前を覚えたモンダルマガレイは、少なくとも水納島でのボートダイビングではほぼほぼお目にかかる機会がない。

 トゲダルマガレイの倍ほどのサイズになる大きなカレイであるにもかかわらず、彼らモンダルマガレイは浅い環境が好きで、もっぱらリーフ内の岩々したところで暮らしているようなのだ。

 なのでビーチの帝王・巨匠コスゲさんならちょくちょく遭遇されているかもしれないものの、ワタシ自身は過去にかろうじて目にしたことがあるかないかくらいで、画像記録を残したことはこれまで一度も無い。

 そんなモンダルマガレイと、今夏(2024年)ようやくリーフの外で初遭遇!

 トゲダルマガレイを見慣れた目にはとにかく巨大で、また両目の離れっぷりが半端ではない不思議な顔は、なんとも印象深い存在感。

 ああしかし。

 8月のその時は、画像記録を残す手段が手元に無かったのだった。

 ああ、一期一会のかくも儚き……。

 ところが!

 翌月同じポイントで、再びモンダルマガレイと遭遇する機会を得た。

 おそらく同じ個体と思われるモンダルマガレイはかなり活発で、コンデジを向けるとすぐさまフワリと体を浮かせ、空飛ぶ絨毯のようにス〜イスイッと相当長距離を泳ぐ。

 また、泳いでいる時は他の普通の姿勢の魚でいえば背ビレに当たる役割を果たしている胸ビレを立たせるため、なにげにカッコ良くすら見えるモンダルマガレイ。

 でも礫底でジッとしているときには、トゲダルマガレイと同じように海底に溶け込むような色味になる。

 ↑この画像のどこにモンダルマガレイがいるか、わかりますか?

 礫底でジッとしている時は砂礫紋様になっていても、警戒心が上回ると体色を濃くする。

 そして濃淡いずれの場合でも、リング状に点在する青い模様が出ている。

 もっとも、海底が暗い色合いの岩肌や砂礫だったりすると色濃く出ている青いリング模様も、水納島のように海底が明るい色味だと、魚体全体が薄い色合いになるため、肉眼では↑この写真のようには見えないかもしれない。

 薄くなっているその模様はトゲダルマガレイでも見られるものだから、モンダルマガレイの小さめの個体に出会ったら、はたしてトゲダルマガレイと区別がつくだろうか…

 …という心配は必要なさそう。

 というのもモンダルマガレイには、両目の前の体の輪郭(矢印の先)が、ややくぼんでいるという特徴がある。

 かてて加えて半端ない両目の離れ方、これほどの特徴があれば、トゲダルマガレイと見分けがつかないはずがない。

 その半端ない両目の離れ加減を強調できるアングルでも撮りたかったところながら、ともかくもなんとか画像記録を残すことができたモンダルマガレイ。

 どうやらこのあたりを暮らしの場にしているようだから、次回はもっとじっくりお付き合いしてみようっと。