全長 50cm
ハマフエフキの仲間には、アマクチビ、ホオアカクチビ、そしてこのムネアカクチビなど、名前に「クチビ」とつく魚たちがわりといる。
昔からこの語感がなんとも不思議的で、ミョーに気にはなりつつもキチンと調べてみたことはなかったのだけれど、今回この稿を書くにあたり、そのヒミツを初めて知った。
はたしてクチビとは、阿波地方でハマフエフキのことをさす方言名だった。
ムネアカクチビとはつまり、意味合いからすればムネアカフエフキということだったのだ。
その名のとおり、胸ビレの付け根付近に赤い模様がわずかに入っているので、写真であれば他と見分けるのは容易だ。
でも水納島ではリーフ際あたりでたま〜に1匹が悠然と泳いでいるのを見かける程度で、タマンのように群れているのは観たことがない。
数は多くはないけれど、タマンが海水浴場エリアでも観られるのと同じく、このムネアカクチビも海水浴エリア内をウロウロしていることがある。
こんな浅いところに、それも海水浴場にこのようなデカい魚がいると、これといって目立つ模様は無くともやや異質なほどの存在感がある。
リーフの外ならいざ知らず、こういう場所ならほぼほぼ無敵であることを自覚しているのか、ヒトが傍にいても臆することなく、ときには見栄を切ったりもする。
……実は、海水浴場で海水浴客に餌付けられているがゆえの、「エサをよこせ!」ポーズかもしれない。
※追記(2022年12月)
大型の捕食者がほとんどいない水納島の海では、リーフの外でも無敵であるらしく、砂底の中層でも悠然としているムネアカクチビ。
あるとき体色をまだらに濃くしていたので、なにかいな?と近寄ってみたところ…
ホンソメワケベラにクリーニングケアをしてもらっている最中だった。
体色の濃淡は気分に応じてすぐに変えられるようで、ホンソメケアが気持ちいいのか、だんだん濃くなっていった。
ところが近づきすぎたワタシを嫌がってその場を離れる際には、すぐに…
体色を薄くさせて泳ぎ去っていくムネアカクチビだった。