全長 40cm
ナガテングハギモドキを目にするものは少ない。
彼らが暮らしている水深は、ダイバーがフツーに訪れる領域よりも、もっと深いところだからだ。
そのため、フツーの魚ならネット上で画像検索すれば星の数ほど出てくる水中写真も、ナガテングハギモドキとなると数えるほどしかない。
かの魚類検索データベースに登録されているナガテングハギモドキの写真ですら、たったの7枚でしかない。
そんな尋常ではないナガテングハギモドキが、どういうわけかオタマサの目の前に群れで現れたらしい。
まだフィルムで写真を撮っていた頃のことで、記録として残っていたフィルムはたったの1枚。
そしてそのフィルムマウントには、「テングハギモドキ」と記されていたのだった……。
今回こうして過去の写真をふりかえることがなければ、撮影者本人ですら知らないまま闇に消えていたかもしれない、ナガテングハギモドキとの邂逅の記憶。
たとえ撮影者はまったく認識していなかったにせよ、この写真は、千載一遇のチャンスを捉えた貴重な記録なのである。