全長 25cm
カンモンハタ同様、大きく育ってもせいぜい30cmほどの小型のハタながら、カンモンハタよりも美味だそうで、水産資源的価値は高いらしい。
とってもそっくりなハクテンハタと見分けるには、尾ビレに注目するとよい。
ハクテンハタは尾ビレに白点模様がほとんど入らないのに対し、ナミハタは尾ビレにも白点が入るという違いがある。
ところで、ナミハタという名前の「ナミ」を、模様からくる「波」ではなく、普通という意味の「並」と勘違いしていたワタシは、なんでこんなに数少なくむしろレアといっていいハタが、よりにもよってナミハタなのだろう…とずっと不思議に思っていた。
それほど水納島では、滅多に会えないハタだったのだ。
ところが近年(2019年現在)、各ポイントのそこかしこでこのナミハタがやけに目立つようになっている。
目立つといってももちろん日中に群れ集うわけではないけれど、リーフ際のサンゴの下や岩陰などから、こちらの様子を伺っている姿をよく見かけるのだ。
同じように見つめているカンモンハタがたいてい着底しているのに対し、ナミハタは底から離れてホバリング状態であることが多い。
そっと近寄ればただちに逃げたりはしないから、容易にお近づきになれる。
そうやってお近づきになれる機会が、10年くらい前までと比べると格段に増えているのである。
いったいぜんたい、彼らに何が起こっているのだろう?
…という疑問を、海中でナミハタに会うたびに朧げに抱き続けて数年、この稿を書くにあたり、ついに「これは!」という理由にたどり着いた。
それは、水産資源的に減少傾向にあるナミハタを自然保護の方法で殖やそうということで、八重山漁業協同組合の「電灯潜り研究会」の人たちが中心となり、ナミハタたちの産卵場として知られているヨナラ水道の一角に保護区を設けた、という話。
ナミハタはカンモンハタのように繁殖期になるとひとところに集まる習性があるそうで、「産卵集群」と呼ばれるその集まりを守れば、資源復活に役立てられるのではないか、という試みだ。
その後行われた水産総合研究センターの調査によると、保護区を設けることで産卵集群が十分に保護されることが明らかになったそうである。
ご存知のとおり、沖縄よりも遥か南方に暮らす魚たちが、季節来遊魚という形で伊豆など本土の沿岸に数多く姿を現す。
ということは、八重山の海で繁殖しているナミハタの幼魚たちが、水納島周辺に現れてもなんら不思議ではない。
このヨナラ水道における産卵集群の保護は2010年から始まったそうで、近年になって水納島でナミハタが増え始めたタイミングとピッタリ符合するではないか。
美味しいがゆえに獲られすぎて減ってしまう魚たちは、ほんのちょっとの心配りだけで見事に逞しく復活する。
その「ほんのちょっとの心配り」とは、少なくなったから稚魚を放流しましょう、サンゴを移植しましょうという考え方とは、似て非なるものであることは言うまでもない。
ところで上記リンク先では、午後11時から数十分間繰り広げられたというナミハタの産卵シーンが、動画で紹介されている。
動画を見てみると、夜の夜中に一体何やってんだってくらいお盛んなナミハタたち、そのオスらしき個体はすべて、お腹側が白くなっていた。
どうやら興奮色・婚姻色のようだ。
アヤシイ動きをしていたカンモンハタのオスのお腹が白かったのも、やはりその時期ならではの色だったのだろう。
さて、そうやって少しずつ数を増やしつつあるナミハタ。
今のところ出会うのはオトナサイズばかりで、チビターレには会ったことがない。
ナミハタのチビターレってどんな子なんだろう?
これがあなた、黒地に白点模様というサラサハタチビの逆バージョンといった趣で、とびきりカワイイお魚さんなのだ。
いったいどういうところでチビターレ時代を過ごしているのだろう?
ネット上で散見されるナミハタのフィールド写真は、たいてい浅い浅い内湾チックなサンゴが群生しているような場所っぽい。
水納島なら、アオノメハタのチビターレ同様カモメ岩方面のインリーフが狙い目か?
知れば知るほど、会ってみたいハタ類のチビがどんどん増えていく……。