全長 35cm
カンランハギという名のニザダイの仲間が別にいるために、偽物呼ばわりの憂き目に遭っているニセカンランハギ。
もっとも、カンランハギは潮通しのいい環境を好むため、水納島の周辺、特に砂地のポイントでは観られない。
なので水納島ではむしろ、このニセのほうが本家だ。
といいつつ、魚影の濃い海なら群れていることもあるというニセカンランハギは、水納島ではたいてい1〜2匹でおり、おまけに中層をゴキゲンに泳いでいるときの彼らは、おおむね黒っぽく見えることのほうが多い。
遠目にこのように見える魚を、しかもハギの仲間を、わざわざお近づきになってつぶさに観てみようなどという酔狂なダイバーはそうそういない。
かくいうワタシも長い間さほど気に留めていなかったところ、今回このお魚コーナーにてニザダイ類に注目する運びとなって、彼らの真の実力を知ることとなった。
ニセカンランハギ、よく観ればなにげに美しい……。
カンランとは、「観覧」に耐えうる美しさを表していたのか……
……と思ったら、まったく違った。
カンランハギやニセカンランハギの「カンラン」とは、橄欖のことなのだそうな。
橄欖とはすなわち、オリーブのこと。
その体のフォルムなのか濃い目の時の色合いなのか定かではないけれど、オリーブのようだからこの名があるようだ。
そういえば、鉱物にもカンラン石ってあったけど……
あ、カンラン石の鉱物といえば、鮮やかなグリーンではないか。
そうか、カンラン石も橄欖石でしたか…。
魚の名前って、いろいろ勉強になるなぁ。
もっともっとニセカンランハギについて知るためにもお近づきになりたいところながら、群れない会わない近寄れないと3拍子揃っているため、なかなか外見以上のことを知る機会がない。
せいぜい分厚い唇(?)の口で、底を漁っている様子を見かける程度だ。
でも、チビターレには今年(2019年)会うことができた。
水温が上がり始める頃から、リーフ際の死サンゴ石がたくさん転がる広場をサーチすると、時々出会えるのがこのチビターレ。
最初見つけたときは、どのハギのチビなのかさっぱりわからなかった。
そこは便利なネット社会、調べてみると、どうやらニセカンランハギのチビらしいことがただちに判明。
オトナ同様チビチビの個体数も少なく、周辺に1匹しか見当たらない。
それでも、石ころ広場の常連であるモンツキハギのチビたちに混じり、健気に泳いでいた。
3cmほどのこのチビターレから大きなオトナになるまでいったい何年かかるのだろう。
飼育下では25年もの長期飼育記録もあるというから、慌てず急がずじっくり育っていくのかもしれない。