全長 35mm
ハゼ類は昔から人気のある魚のグループで、小さな小さなベニハゼの仲間たちもしかり。
いろんなダイバーが知られざる小さなハゼをあちこちで「発見」し続けることもあって、いまだに新和名が次々に登場している。
このオキナワベニハゼはそんな新参者とは違って古くからその名が知られているベニハゼの1種で、沖縄の名が冠されているだけあり、水納島でも個体数は多い。
ただし彼らが好むのは陰になっている部分なので、白い砂地で日が当たっている部分とのコントラストからすると、ライト無しでは暗くて見づらい。
だからといって無造作に光を当ててしまったら、彼らはシュッと巣穴に逃げてしまう。
基本的に日中でも暗がりにいる生き物たちというのは、光がキライだからこそ暗がりにいる。
なのでオキナワベニハゼを観る際には、ライトを当てるならいきなり直球ど真ん中の明るい光線ではなく、ボヤ〜と広がる灯りの端っこくらいのところをそーっと充てるなどして驚かさないようにしてあげたい。
もっとも、日中でも陰になる部分とはすなわち、オーバーハングとはいかないまでもマイナス角度の斜面になっているわけだから、そこにピトッ…とジッとしているオキナワベニハゼは、このように見えることがフツーだ。
お腹側が上に、背中側が下になっているから、見づらいといえば見づらい(冒頭の写真もホントは天地が逆だし、以下の写真は必ずしも天地は見た目どおりではない)。
といったあたりを踏まえておけば、オキナワベニハゼは浅いところからたくさんいるので、お近づきになる機会は多い。
カイメンなど鮮やかな色合いの上に載っていることもけっこうある。
サンゴの上に載っていることも。
彼らは岩肌にテキトーについているのではなく、巣穴の近くにあるお気に入りの場所にチョコンと載っている。
岩肌をうろつくゴンべ類や岩肌を物色するベラ類がそばに来るとサッと巣穴に逃げ込むけれど、相手が自分を狙うモノじゃないとわかると、すぐに穴から顔を出して、また元の場所に戻って来る。
他の魚が近寄るたびにいちいち緊急避難していたらおちおちエサも食っていられない……
…などと大事な避難をおろそかにすると、
こういう目に遭うことになる。
岩肌の小さなプレデター、カスリヘビギンポに丸飲みにされた、哀れなオキナワベニハゼの最後。
小さなハゼたちは、四六時中危険と隣り合わせのサバイバーなのである。
そんないつ訪れるかわからないキビシイ試練がありはしても、お気に入りの場所にいるのは、ただ危険を察知するためではない。
漂ってくるエサとなるものを見つけては……
シュッとその場を離れてエサのほうまで泳いでいき(10cmくらい離れることもある)、パクッとやったらすぐまた元の場所に戻って来る。
いわばお食事のためのポジショニングなのだ。
ここというところで落ち着いていると……
お食事以外にアクビも披露してくれる。
ウカツにライトを当てるとすぐさま逃げてしまうオキナワベニハゼも、時間をかけてゆっくりお近づきになると、アクビくらいなら出し惜しみはしない。
普段よく見かけるのは↑これくらいのサイズのものが多いんだけど、たまに貫禄たっぷりになっているものもいる。
お腹が膨らみ気味に見えるところからして、成熟しきったメスなんだろうか。
ちなみにこのテの小さなハゼたちは、メスからオスへ、オスからメスへ、状況に応じてどっちにも性転換することが知られている種類が多く、オキナワベニハゼも同様だそうだ。
出会いを求めてあちこち広範囲を泳ぎ回れる魚じゃないから、出会いのチャンスが限られているとなると、相手に合わせてどっちにも性転換できるほうが便利なのだろう。
でもこれくらい老成していても、コトと次第によってはメスからオスへ、はたまたオスからメスへ転換することもある……んだろうか?
なかなかイメージしづらい世界ではある……。