全長 30cm
かつてイザリウオと称されていた魚たちは、2007年に「カエルアンコウ」という名前に変更された。
その理由を一口で言うなら、言葉狩りが蔓延する窮屈な日本社会のなせるワザ、ということになるだろう。
さてオオモンカエルアンコウ、可愛いサイズのカエルアンコウたちと比べると、規格外にデカい。
伊豆などの本土の海で出会うカエルアンコウといえば、チビターレはもちろんのこと、オトナでも手のひらの上に可愛く乗るくらいのサイズのものが多い。
そのためカエルアンコウをよくご存じの方でも、初めてオトナのオオモンカエルアンコウに遭遇すると、眼前50cmのところにいてもなお気づけないかもしれない。
そこにオオモンカエルアンコウがいますよ、と指し示しても、
「この岩のどこにカエルアンコウがいるの?」
という反応を示されるのだけど、実はその「岩」こそがオオモンカエルアンコウだったりするのだから、吃驚仰天されるのも無理はない。
とにかくでかい。
でかいだけあってデデンッといるだけのものがいるかと思えば……
でかくともウミシダに寄り添っていたりすることもある。
また、他のカエルアンコウ類同様に、カラーバリエーションが豊富だ。
すぐ上の写真の子は、泳いでいるところ。
這い進むしかなさそうに誤解されているカエルアンコウ類は、いざとなるとエラ穴からジェット水流を噴射しつつ、けっこう器用に前進する。
このような赤味系の色合いだと、撮影するにもけっこう絵になる。
ところがどういうわけか、水納島で観られるオオモンカエルアンコウは、圧倒的に真っ黒なものが多い。
しかもたいてい、ドデンッと岩の上に乗っかっているだけ。
また、ここに挙げた一連の写真の多くはヒレを全開状態にしてくれているけれど、通常はこんな感じだ。
なんだか出来損ないの怪獣みたい……。
オオモンに限らずそもそもカエルアンコウをご存知ではない方にこれが魚だと伝えても、にわかには信じてもらえないこともある。
魚に見えない方にとってはヒレを広げたって大した違いはなく、そもそも目がどこにあるかわからないから、どっちが前でどっちが後ろなのかさえ判別不能かもしれない。
ちなみに彼らの眼はここにある。
体のわりに小さな小さなお目目は、こんな感じ。
目の位置さえわかれば、あとはおのずと「魚」になっていくことだろう。
ところで、真っ黒であれカラフルであれ、動かざること山のごとしなオオモンカエルアンコウながら、ずっと観ているとアクビをしてくれることもある。
でまたこの口が、まるでゴジラが放射能を吐きたおしているかのように、とんでもなくデカい。
発射10秒前。
…5、4、3、2、1……
…発射!!
チュドーンッ!!
……と、音さえ聴こえてきそうなほどだ。
いくら黒くて目立たないからといっても、そんなに派手にアクビをしていたんじゃ、餌になる小魚たちにもバレバレじゃないのか?
アクビをせずともすでにバレバレになっていることもある。
卵を守っているミツボシクロスズメダイの最終防御ラインに入ってしまっていたらしいオオモンカエルアンコウが、ミツボシクロスズメの尾ビレバシバシ攻撃を受けているところ。
オオモンカエルアンコウの顔の前でもお構いなしに、「あっち行け!!」を果敢に繰り返すミツボシ君。
その勢いに気圧され、スゴスゴと方向を変えて逃げの一手になったオオモンカエルアンコウ、こういう場合には、でっかい口はなんの役にも立たないらしい……。
さて、ここまで書いておきながら今さらながらではあるけれど、体色で種類を区別できないカエルアンコウ類もまた、写真だけで種類を同定するのはホントはムツカシイ。
そのためこれまでリニューアルを進めている当お魚コーナーにおいては、カエルアンコウ類にはなるべく触れないようにしてきたのだった。
でもオオモンカエルアンコウは際立ってでかく、同じくでっかいソウシカエルアンコウとはわりと区別がつく(ような気がする)ので、上にあげた写真はほぼオオモンカエルアンコウで間違いないと思われる(ひとつだけ自信がないモノがいるけど)。
ただし若い個体やチビとなると、「デカい」という手がかりが無くなってしまうから、手も足も出ない。
手も足も出ないと言いつつ、これはオオモンカエルアンコウのチビターレではなかろうか……と思っているのがこちら。
何かにピトッと寄り添うでもなく、砂地の根の脇に転がるサンゴ礫の上にポツンとたたずんでいたチビは、左隅のワタシの人差し指と比してこのサイズだから、とんでもなく小さい。
これがホントにオオモンカエルアンコウだったら人生最小記録だ。
しかしまったく確信が持てないため、声を大にしてヨロコビを表せないまま今に至っている(これを撮ったのは前世紀…)。
間違いなくオオモンだ、ということでしたら、大きな声でお知らせください。
イロだ、その他だ、ということでしたら、そっとご教示くださいませ……。
ちなみにイロカエルアンコウの稿では、イロカエルアンコウということにしていたりします(汗)。
※追記(2021年9月)
昨年(2020年)の夏場に、同じ根でずっと一緒に過ごしていたオオモンカエルアンコウのペアがいた。
わりと頻繁にチャーミーグリーンになってくれるのだけど…
…いかんせんどちらも真っ黒なので、なかなか絵になりにくい。
あるときオタマサがこのチャーミーグリーンペアを観ていたところ、片一方が急に変な動きを始めたという。
やおらシャチホコ立ちするオオモンカエルアンコウ。
するとすぐさま……
お尻からモヤモヤに包まれつつ白い塊が排出された。
これは……
ウンコだ!!
オオモンカエルアンコウはデカいためマクロレンズ装備のカメラでは不向きだから、ここまでコンデジで撮っていたオタマサは、絶好の被写体とばかりに、さっそくデジイチで激写。
意外に白いオオモンカエルアンコウのウンコなのだった。