全長 20cm
デカッ!
…という存在感ではスダレヤライイシモチと双璧を成すリュウキュウヤライイシモチ。
とりわけリュウキュウヤライイシモチの老成魚はバカでかい。
その昔の両者はリュウキュウヤライイシモチとして一緒くたにされていたものが、その後別種とされた、という話はスダレヤライイシモチの稿で触れた。
そこでも触れているとおり、両者の見分け方の最大のポイントは、尾柄部の黒帯の有無。
上の写真のように若い頃なら、その特徴がクッキリハッキリしている。
ただしそれは若魚の頃のことで、これがさらに成長して巨大になると……
ビミョー。
このうえ老成すると……
尾柄部にうっすらと黒い部分が残っている……ように見えているだけ?というくらい目立たなくなってしまう。
なのでホントにこれはスダレじゃなくてリュウキュウですか?と真面目に問われると、ワタシはしどろもどろになってしまうかもしれない。
ただ、両者はある程度住み分けているように見え、リーフエッジの下のオーバーハング部あたりだとどちらも観られることもあるけれど、岩場のポイントの昼なお暗い岩陰などにいるものは、まず間違いなくリュウキュウヤライイシモチだ。
暗いところから外を見つめ、ただジッとしている老成魚をひとたびライトで照らそうものなら、その巨大な姿にビックリする。
でまたヤライイシモチの仲間なので、その牙(?)は口を閉じていてさえ戦闘的だ。
リュウキュウヤライイシモチは学名をCheilodipterus macrodonといい、種小名のmacrodon とは、ラテン語で「大きな歯」という意味だそうな。
体を表すその名の通り大きな歯で、リュウキュウヤライイシモチは小魚くらい軽く食べちゃうらしい。
20cmを超す老成魚は海中ではさらに巨大に見えるから、そのうえこんな牙まであったら、スカテンやキンセンイシモチと同じグループに属する魚とはとても思えない。
でもやっぱりテンジクダイの仲間なので、オスが卵を口の中で保育する。
ただし、このように顎を膨らませて卵を保育している姿はちょくちょく目にするものの、たいてい暗がりの岩壁寄りに潜んでいる彼らは、卵を保育している様子をじっくり観せてもらおうとすると、つれなくプイと顔を岩壁側に向けてしまう。
なのでこれまで一度として彼らリュウキュウヤライイシモチが大口を開けているところを前から観たことがない。
もっとも、そのためにじっくりたっぷり30分…などと時間を費やしたことはないんだけど…。
リュウキュウヤライイシモチの繁殖期がいつごろから始まるのかは不明ながら、5月には早くもその年生まれらしきチビターレの姿が見られ始める。
リュウキュウヤライイシモチのチビは、尾柄部に黄色地が無く(その代わり顔周辺が黄色い)、黒点のみなので、小さくても見分けがつく。
周りのアオギハゼと変わらぬそのサイズ、ド迫力ボディのオトナとは違い、リュウキュウヤライイシモチもこれくらい幼ければ、テンジクダイの仲間らしい繊細さがうかがえる。
もう少し成長すると……
これでもまだ可愛いさが残っているけれど、さらに成長すると……
そろそろオトナの片鱗が(一連の幼魚の写真はそれぞれ別個体です)。
これからさらに成長すると……
随分オトナっぽくなる。
こうして成長段階の一連の流れを見てみると、オトナになるまでの彼らの艱難辛苦サバイバルはさておいて、やはりチビチビのほうがカワイイ。
とはいえ、オトナと比較してこそ可愛いチビターレも、そもそもがポジション「目の端」スーパーバイプレーヤーフィッシュだから、誰にもその可愛さには気づいてもらえないのだった。
※追記(2019年10月)
10月になっても様々な幼魚と出会う今年(2019年)の水納島の海。
リュウキュウヤライイシモチのチビターレも、この時期に人生最小級に出会うことができた。
およそ1cmほどの超チビターレ。
これほど小さいと、ヤライイシモチとスダレヤライイシモチの区別はつかないところながら、リュウキュウヤライイシモチは頭部が黄色く尾柄部が黒いという、かなりわかりやすい配色をしてくれている。
もっともそのたたずまいは、ほとんどネオンテトラやグローライトテトラといった、小さな淡水魚の趣なのだった。