水納島の魚たち

セグロマツカサ

全長 25cm

 アカマツカサの仲間には似たような種類が多く、しかも写真だけでは専門家ですら種類を同定できないものが多い。

 でもセグロマツカサは他に比べてメタリックなボディだし、その名のとおり体側の背側がやや黒ずむから、写真ではもちろん、海中でも見分けるのは容易だ。

 この種類だけがドドンと群れているのを観たことはないけれど、場所によってはリーフ際で他のアカマツカサ類と一緒にいる姿をよく観る。

 普段は閉じている背ビレも、ずっと観続けているうちに…

 …時々サービスして開いてくれる。

 明るい日中でも表に出ていることが多く、ときにはリーフエッジ付近のサンゴの上でのんびりしていることもある。

 そういう場所にはたいていどこかしらでホンソメワケベラソメワケベラが開院しているので、セグロマツカサはクリーニングを受けながら、腹が減ってしまった井之頭五郎のような顔をしていたりする。

 だからといってやすやすと近寄らせてくれるわけではなく、ウカツに近寄るとすぐさまサンゴの陰に隠れてしまう。

 セグロマツカサを見かけるときはたいていこんな感じで、周辺に何匹もいるにはいても、「群れ」を作っているのを観たことがない。

 メタリックボディとはいっても彼らも夜の帝王だろうから、本来は他のアカマツカサ類のように、洞穴や岩穴の中の暗いところで群れているのだろうか。

 でもネット上にこれほどいろんな水中写真が出回っているにもかかわらず、セグロマツカサが他のアカマツカサ類のように密集隊形で群れている画像は、いくら探しても見当たらない。

 どこかの海で密集しているのだとしたら、それは一度観てみたい…。