全長 10cm
※訂正(2024年2月)
のっけから訂正で恐縮ながら、これまでずっと我々も世間も「セイテンビラメ」と信じていた魚は、実はザ・セイテンビラメではなく、まったく別の種類であることが判明してしまった。
…2015年のことだけど。
2015年に新種として記載されたこの魚は、その名も「オオシャクダルマ」という。
この魚の最大の特徴であるこのピンッと突き出た竿を、聖徳太子など古代の高貴なお方が手にしている笏の大きいものになぞらえて「オオシャクダルマ」という名になったそうな。
昔はチョコチョコ出会えたセイテンビラメ改めオオシャクダルマ、最近は遭遇機会も随分減ってしまったものの、ゲストをガイド中に出会っていれば、「セイテンビラメ」と案内していたのは間違いない。
かつて当店に騙されてしまったみなさん、セイテンビラメではないということになっていますので、ログブックの訂正をお願いいたします。
なにはともあれ、これまではヒラメと名がついているのにカレイの仲間だというのでややこしかったものが、晴れて名前が変わって誤解されることはなくなった。
でもダルマガレイの仲間だからって、「ダルマ」で止めてしまったら、慣れない方は何の仲間なのか想像つかないんじゃ…。
※というわけで、以下ではナニゴトも無かったように、「オオシャクダルマ」として紹介しています。
砂地の根の際あたりで小さな魚などを撮影していると、脇の方からのんびりと地を這いながら視界に入ってくるモノがいる。
オオシャクダルマだ。
ヒラメという名でありながら、実はカレイの仲間というややこしい魚である。
ややこしいけれど、たしかに「左カレイに右ヒラメ」の法則に則っても、オオシャクダルマはカレイの仲間だ。
顔つきもトゲダルマガレイに似ている。
もっとも、トゲダルマガレイのように一望白い砂底にポツン…といるようなことはなく、根の端っこの岩陰付近で地味に暮らしている。
何を目的にしてスローモーな前進をしているのかわからないけれど、体の前方についている釣り竿のようなヒレを、ピコピコと上下に動かしているのがおもしろい。
こんな感じで這い進む。
竿をアップで観てみると…
この竿のようなものは背ビレの一部で、なぜか一本だけ特化してこのような形になっているのだ。
ただの白っぽい地味なヒラメ・カレイかと思いきや、意外な隠し技を持つオオシャクダルマ。
カエルアンコウなどと同様、小魚をおびき寄せるためのルアーの役目をさせているのだろうか。
ちなみに、オオシャクダルマがこの竿(?)を使って何かをおびき寄せている様子を観たことはない。
ジッとしているときはむしろこの竿を収納している。
収納した状態だと咄嗟には誰だかわからないけれど、その場を去ろうとする際には必ず竿をシュッと出して正体を明らかにしてくれる。
この竿を動かしているのは、ジワジワと砂底を這い進んでいるときだけなのかもしれない。
それほど珍しいわけでもない気がするものの、見たいからといってすぐに出会える魚でもない。
忘れた頃にふと出会える、そんな魚である。