全長 2cm
アオイソハゼやシロイソハゼなどよく観られる種類に比べると随分小さなこのイソハゼは、その存在が知られるようになってから長い間「イソハゼ属の1種」扱いだった。
その間アカデミズム変態社会では分類学的研究が進められていたようで、2014年には和名がつき、昨年(2021年)世に出た「日本のハゼ増補改訂版」では、晴れて素敵に詩的な和名が掲載されていた。
その名もシズクイソハゼ。
和名がついた記念…というわけではまったくないのだけれど、その年にオタマサがたまたま撮ったのが冒頭の写真。
真っ赤なカイメンに載っているからなのか、それともこの周辺は白い砂底だから明るい環境に合わせているのか、図鑑で観られるモノに比べるとその体は随分白っぽい。
色味だけではホントにシズクイソハゼなの?ってところながら、シズクイソハゼの名の由来でもある眼の下から顎に向かって伸びる1本の細い赤線や…
ビヨ〜ンと伸びている背ビレの最初の棘に小さな黒点が並んでいる……
…ことなどから、シズクイソハゼであることは間違いないと思われる。
ちなみに「日本のハゼ増補改訂版」においてもなお、このシズクイソハゼの分布の項には、
奄美大島、慶良間諸島、西表島
とあるのみ。
世のハゼ変態社会人はハンパないから、実際は本島各地で撮影されている写真がポコポコネット上でも見られるのだけれど、ともかくひところは観察されている場所が限定的だったイソハゼなのだ。
ただ、いかんせん小さく儚げなサイズだから、もうこのクラスのサイズの生き物を凝視するのがつらいクラシカルアイジェネレーションには、たとえ目の前にいたとしても認識できないかもしれない。
それでもファインダーさえ覗いていれば、こういう姿も見せてくれる。
同じように小柄なベニハゼ類が大口を開けると口が筒状になるのに比べると、やけに獰猛そうな口の開き具合い……。
アクビは獰猛そうでもビビリなようで、オタマサによると、撮っているうちに穴に入っちゃったそうな。
そもそもそんな珍イソハゼだなんて知らずにテキトーに撮っていたオタマサだから、その時は穴に入ってしまったあとはカメラを向けなかったオタマサながら、その8年前(2013年)には穴に入っている姿も撮っていた。
当時は上半身だけ見ても誰やらさっぱりわからなかったものが、今回少しばかりやる気になって図鑑でイソハゼたちとにらめっこしているうちに、だんだんワタシにも見えてきた。
眼の下から細い赤線が伸びていることや、焦点が合っていない背ビレの最初の棘を無理矢理観てみると…
…点が並んでいることから、実はこのハゼもシズクイソハゼと認定。
点の色が赤いのが気になるけど、合ってますかね?
海の中でじっくり観てみたいのはヤマヤマながら、はたしてこんな小さなハゼに気づくことができるだろうか。
イソハゼというイソハゼすべてにカメラを向けていれば、きっとそのうち……。