全長 10cm(写真は5センチくらいの若魚)
図鑑でもなんでも、とにかく「普通種」と扱われているソメワケヤッコ。
でも水納島ではなかなか出会えない。
ではお向かいの伊江島のドロップオフのような環境ならたくさんいるのかというとそうでもなく、かつて何度か訪れた記憶では、ときおりペアが観られる程度だった。
ところが、その昔仕事で行ったオーストラリアはケアンズで潜ったときのこと。
水深5mそこそこのガレ場に、このソメワケヤッコのペアが、それこそ水納島で見かけるヘラルドコガネヤッコなみに、そこかしこでウロチョロしているのを見てビックリしてしまった。
これならたしかに「普通種」だ。
あいにく水納島ではそういうわけにはいかず、出会えるとしてもたまたま流れ着いた幼魚が、リーフ際の浅いガレ場でチラチラしている程度。
でも流れ着いてくるのは夏の初めなので、その後しばらく居続けてくれる。
上の写真の子も、2か月後にはこうなっていた。
ちょっぴりオトナになっている。
残念ながら、冬を乗り切って次の年もまた同じ場所で観られることはまずない。
この子も、10月になったらもうその姿を消してしまった。
どうやら水納島の環境では冬を越すことができないらしく、これ以上育った成魚を観ることはない…
…と思っていたら、どう考えても一冬以上は越しているであろうオトナに出会う機会があった。
岩場のポイントのわりと深いガレ場の根で、単独ながら、これまで水納島で観たソメワケヤッコの中では最大級だ。
対物比がないとサイズがわかりづらいけど、エラ蓋のトゲの大きさを観れば、この子がいかにデカいかおわかりいただけよう。
そうか、ソメワケヤッコ、水納島でもやればできるんだ!
2017年には、さらに驚きのシーンが。
ヘナチョコ写真で申し訳ないけれど、なんとなんと…
ソメワケヤッコがペアに!!
まだ若い個体同士とはいえ、とにかくソメワケヤッコのペアなんて、水納島で目にしたのは初めてだ。
…と喜んでいたのを懐かしく思い出すくらい、この先そこらじゅうでいつでも観られる魚になったりして。
たとえレア度は下がろうとも、水納島でも↓こんな笑顔に出会えるのなら、「普通種」大歓迎である。
※追記(2020年4月)
今年(2020年)1月に、ソメワケヤッコの人生最小記録を更新した。
2cmほどの激チビ。
亜熱帯の沖縄とはいえ1月は真冬も真冬、このチビターレがいつ誕生したのかは不明ながら、少なくとも冬になってからだろうと思われる。
魚によっては沖縄の海でも冬場に繁殖期を迎えているものもいるとはいえ、ソメワケヤッコをはじめとするキンチャクダイ類などは沖縄では水温が高くなってからのはずだから、この時期に出現している極チビは、沖縄よりもさらに南から流れてきている子たちということなのだろう。
伊豆あたりにまで南洋の魚のチビチビが流れ着くのだから、沖縄にだってたどり着いているのは間違いない。
この冬はどういうわけか静かな南洋ベビーブームで、ソメワケヤッコ以外にもいろいろなチビターレに会っている。
流れ着いた先(沖縄のこと)の水温が、昔のように彼らの命を奪うほど冷たくなくなっているってことかもしれない。
冬を越すチビチビが増えれば、ソメワケヤッコがフツーになる日も近い。
※追記(2023年1月)
その後2年経って、明らかに冬を越していると見られるサイズのソメワケヤッコに会う機会が確実に増えている。
航路下の広い範囲を縄張りにしているらしきソメワケヤッコは人生最大級だったのだけど、あいにくチビチビとは違って行動範囲が広く、ひたすら逃げていくから証拠写真のみで終了。
矢印の先のトゲのサイズで、コイツが大きな個体であることがおわかりいただけよう。
ここまで大きくはないけれど、ひと冬越しは確実なものにも数個体いて、そのうちの1匹は、ヘラルドコガネヤッコといい仲になっていた。
ホントに異種間ペアかどうかは不明ながら、わりと行動を共にしている時間が長かったから、ひょっとするとひょっとするかも。
で、さらにひょっとして、ワタシが勝手にピエールコガネヤッコと名付けているハイブリッド個体の片親は、ソメワケヤッコなんじゃなかろうか…とも思ったりしている。
ひと冬越し確実な個体との遭遇頻度が増えている一方で、個体数が増えているからだろう、人生最小級もさらに更新した。
上記で紹介しているこれまでの最小級は2cmほどで、それを5mmも下回るミニマム記録を更新した翌日に、たちまちミニマム記録更新の(推定)13mmほどのチビターレだ。
この子まで冬を越せるくらい安定的に増え続ければ、ソメワケヤッコの数がヘラルドコガネヤッコ化する日がホントにくるかもしれない。
尾ビレが傷んでいるけれど、がんばれ激チビターレ!