全長 2cm
サンゴの仲間に、ウミカラマツと呼ばれる仲間たちがいる。
蔓延る各枝が枝垂れ柳のようにダレ〜ンとなっている姿が特徴的なサンゴだ。
このテのウミカラマツはドロップオフ環境のような潮通しのいいところが好きらしく、なおかつ直射日光(?)がほとんど当たらない暗がりに育つ。
残念ながら水納島の場合、通常のファンダイビングで訪れることができるところにそのような環境がないため、ウミカラマツの群体は極めてまれなサンゴといえる。
それでも行くところに行けばウミカラマツが育っているところもあって、そこにヤマブキスズメダイのチビたちがたくさん集まっていたことがある。
その様子を撮ったつもりの写真がこれ。
ヤマブキスズメダイの稿でも紹介しているとおり、水納島近辺ではヤマブキスズメダイの幼魚なんていったらとってもレアな存在だ。
そんなヤマブキスズメダイのチビターレがたくさんついていたものだから、撮っているときはヤマブキスズメダイのチビチビたちにしか目が行っていなかった。
ところが後刻、パソコンモニターでこの写真を観てみると……
少なくとも6個体ものガラスハゼが写っているではないか(矢印の先)。
はて、これはなんというガラスハゼなんだろう?
たまたま横向きになっている子にある程度ピントが合っていたので調べてみると、このガラスハゼの仲間はどうやら、暮らしの場をウミカラマツ類専門にしているスジグロガラスハゼという種類らしいことがわかった。
前述のように水納島近辺ではそもそもウミカラマツ類はそうそう観られないだけに、これまで認識したことがないガラスハゼだ。
人生初登場ガラスハゼ、せっかくだからさっそくちゃんと記録に残しておきたい。
ああしかし。
コロナ禍で揺れた今年(2020年)は、10月というのに思いのほかゲストのご予約をいただいていたおかげでなかなか再訪する機会が無く、発見後ひと月近く経った10月末に、ようやく現地を訪れるチャンスを得ることができた。
珍しくライトを準備してからけっこう深い崖の途中にあるウミカラマツを訪ねてみると、イメージしていたよりも遥かに小さなガラスハゼが、ライトの光を嫌がるからだろう、ウミカラマツのあちこちで、枝から枝へピンピン動いていた。
ひとつの群体にこんなにたくさんいるのは、この周辺にウミカラマツがここにしかないからなのか、それともウミカラマツがそこかしこに群生しているところでも、スジグロガラスハゼはそれぞれにワシャワシャいるのだろうか。
ウミカラマツにはスジグロガラスハゼのほか、ビシャモンエビや名も知らぬコシオリエビの仲間も住んでいたし、そもそものきっかけとなったヤマブキスズメダイも幼少の頃を過ごしているらしい。
彼らにとってこの暗い崖斜面のウミカラマツは、砂漠のオアシスにも等しい憩いの場なのだろう。