全長 10cm
名前がそっくりな魚に、トノサマダイというチョウチョウウオがいる。
水納島ではトノサマダイは岩場のポイントが好きなので、砂地のポイントのリーフエッジ付近では両者が遭遇することはまずないのだけれど、岩場のポイントでは、たまに…
両者がランデブーすることもある。
こうして並んでくれると、名前は似ていてもオトナの体格がけっこう異なることがわかる。
スミツキトノサマダイもサンゴのポリプ、特にミドリイシ類が大好物らしい。
とある夕刻に遊びで潜っていると、ポリプ食のチョウチョウウオ類を中心に、なぜだか一つのテーブルサンゴに群れ集まっているシーンに出会ったことがある。
6種13匹ものチョウチョウウオたちが大集合。
そこにはもちろんスミツキトノサマダイの姿も見える。
こんなに大勢集まる理由がこのテーブルサンゴのどこにあるのかさっぱり不明ながら、ラッセン描くところのあり得ない海中世界のような不思議な光景ではあった。
サンゴのポリプが大好物というチョウチョウウオ類は、たいていの場合その幼魚の頃にはサンゴの枝間を住まいにしている。
なので、このテの幼魚が増えてくる夏にミドリイシ類のサンゴをチェックしていると、彼らの幼魚に出会う機会が増える。
これは100円玉サイズのチビチビ。
オトナに比べると体側の青斑が淡く、なんだか儚い印象すらある。
もっと小さいとこの青班がないらしいのだけど、残念ながらまだ出会ったことはない。
サンゴが元気なうちに是非……。
※追記(2020年11月)
今年(2020年)もスミツキトノサマダイの50円玉よりは大きく100円玉よりは小さな、いわば75円玉くらいのチビチビと出会えた。
しかしあいにくゲストをご案内中で、ようやくカメラを手にして撮れた頃にはひと月ほど経っており、すっかり500円玉サイズに成長していた。
ああ、今年も数少ないチャンスを逃してしまった。
100円玉よりも小さなチビターレの写真をシーズン中に撮るなんて、土台無理な話なんだろうか……
…と思ったら。
昔のポジフィルム写真を見ていたら、大昔にオタマサが撮っていた。
最小級1円玉クラス!
特徴の青い斑がようやくうっすらと色づき始めた程度の激チビターレだ。
水納島に越してきてから数年は初夏であろうと真夏であろうと基本的にヒマでサンゴも元気だったから、こういうチビターレも撮れていたのだなぁ…。
※追記(2022年11月)
幸か不幸か今年(2022年)からすっかりヒマになったからだろうか、今年は今までにないくらいスミツキトノサマダイの幼魚に出会うことができた。
おそらく↓これは人生最小級。
今までにないくらい…といっても個体数は知れているんだけど、リーフの外だけではなくリーフ内でも出会えた。
浅い浅い桟橋脇だからか、人生最小級よりもやや大きめながら、青い斑はいっそう薄々だった。
今秋はリーフ内で潜る機会が多く、リーフ外で出会う頻度の少なさに比べると、どちらかというとリーフ内の環境を好んでいるのかもしれない…と思えるほどその姿を観ることができた。
今年たまたまそうだったのだろうか、それとも毎年同様なのだろうか。
※追記(2024年6月)
今年(2024年)の梅雨もそろそろ明けようかという頃、リーフ際のサンゴの枝間に現れた豆チョウは、人生最小級を更新するスミツキトノサマダイの激チビターレだった。
細い枝が細かく入り組むミドリイシ系の枝間にいるため、全身があらわになる隙間を探すことすら難しく、なんとか斜め上から全身を納めることができたから、とりあえず特徴はとらえているはず。
一見しただけではスミツキトノサマダイに見えないけれど、肉眼では黒い模様以外真っ黄色に見えたボディに、うっすらと斑紋が浮かんできそうな気配が見える。
もう少し成長したスミツキトノサマダイ・チビターレには、眼のところの帯や尾ビレの付け根の黒丸の縁が白くなっているものなのだけど、極小の頃は白縁がまだ無いらしい。
その一週間後には…
すでに黒い模様に白縁がクッキリ。
たった一週間でこの違い。
白縁無しのチビターレを観ることができるのは、かなり短期間に限られるようだ。