全長 9cm
水納島の砂地のポイントの場合、リーフ際から水深20mくらいまでの砂地の根で群れ集まっているタカサゴスズメダイ。
わりと大きめのスズメダイで、たいていイトヒキベラ類が群れているようなところで集まっているから、探すのに手間はかからない。
といってもササスズメダイ同様、これといって色彩的に美しいわけでも、巨群を作るわけでもなく、いつでもどこでも観ることができる……となると注目度は低くなる。
多くのゲストにとっても、せいぜい目の端に入っている程度だろう。
そこをあえてちょっとばかし注目してみると、その体色は随分細かく変化することに気づく。
食事中など中層で気ままに泳いでいるときには明るめの体色をしている。
ところが底近くに下降すると、途端に体色が変わり、秋の初めに色づき始めた木々のようになる。
1匹1匹がてんでバラバラではなく、群れ全体でサッと色を変化させるのだ。
中層で群れ泳いでいても、こっちから近寄っていくと警戒して底のほうへ移動していくので、その移動中に体色を変えている。
だから海底付近から再び中層に戻ろうとしているタカサゴスズメダイは、たいていこんな感じ。
ところが、泳いでいる場所の高低に関係なく、こうして群れが泳いでいるのを尻目に、1人底付近でやる気モードになっているヤツがいる。
おそらくはオスであろうソイツが、やる気モードになっているときはこんな感じ。
なんだか黒いんです。
尾ビレの上下端がクッキリと線になっているから、写真だけ見れば別の魚に見えてしまう。
でも彼がやる気モードになっている上層にノーマルな群れたちが近寄ってくると、すかさずその中に割って入ってアピールしまくる。
中層に行くと色は薄まるけど、尾ビレの上下端にはラインが残っている。
そしてひと仕事終え、海底に戻ってくると、産卵床ゾーンなのか縄張りをチェックし始めるオス。
どうやら中層で集まりながらエサを食べているのはメスたちで、その間オスは自分のナワバリで勝負しているらしい。
といっても本格的な産卵シーズンにはまだまだ遠い季節(2月)のことだったから、これは来たるシーズンに向けての気分盛り上げ運動なのだろうか。
おそらくタカサゴスズメダイの幼魚なのではなかろうか、と思っているのがこちら。
こうして見ると、タカサゴブラックになったときのヒレの色合いに似てるような気も。
幼魚の各段階や、繁殖時期の活発な振る舞いなど、なにげに見どころ盛りだくさんのタカサゴスズメダイ。
今まで目の端にいた彼らを、目の真ん中に持ってくるようにしよう。
※追記(2020年4月)
昨年(2019年)のシーズン終盤の10月に、砂地の根でタカサゴスズメダイがアヤシイ動きをしていた。
やる気モードっぽいタカサゴブラックが、それぞれメスを引き付ける動きを繰り返しているのだ。
なんでそれがメスを引き付ける動きだとわかるのかというと、実際にその動きに誘われるようにしてメスがオスに引率され、オスがキープしている産卵床らしきところまでやってくるから。
左がタカサゴブラックオスで、右が誘われてきたメス。
ところがせっかくここまで来てくれたというのに、あっという間にメスがつれなく去っていったり……
まだ連れてきたメスにいきなりDV攻撃で追い払ったり……
タカサゴブラックはいったい何をしているんだろう?
写真を拡大してみると、オスにもメスにも輸精管や輸卵管が出ていないから、これはある意味セレモニーのようなものなのだろうか。
この時撮っていた写真を観てみると、↓両者がこういう色合いの組み合わせもあった。
色が濃くなっているメスのお腹を観てみると……
輸卵管らしきものが見える(卵のように見える丸いものは、背後の被覆状サンゴのポリプです)。
オスがキープしている産卵床らしき平たい石の表面には、すでに卵がたくさん産みつけられてあるような気配もあるのだけれど……
いかんせんそこに注目したマクロ写真じゃないために、パソコン画面いっぱいに拡大してもよくわからなかった。
でももしこの表面に卵がたくさんあるとすると、先の2つの動画のメスは、産卵に誘われたフリをして産卵床まで来つつ、どさくさ紛れに卵を食べてしまうちゃっかりものだったとか?
真摯に繁殖に取り組もうとするオスを利用する卵狙いの性悪女なのだとすれば、オスが追い払うのも無理はない……。
子孫繁栄のためにセッセとメスを誘うのはいいけれど、ほどほどにしておかないとせっかくの卵が元も子もなくなるかも??