水納島の魚たち

ホンテンスモドキ属の1種

全長 10cm(写真は2cm弱の幼魚)

 テンスモドキの稿で触れたように、「このままではいかん」とようやく重い腰を上げて一念発起したおかげで、今年(2021年)は春からいろんなテンス系チビターレに会えている。

 ハゲヒラベラのオトナがたくさんウロウロしている、とある砂地のポイントで出会った2cm弱のチビチビは、海底に散在しているウミウチワ(海藻)を隠れ家にしていた。

 はて、誰じゃらホイ?

 と近づくと、ウミウチワからそぉーっと離れつつも、遠くに逃げ去るわけでもなく、砂中に逃げ込むわけでもなく、近くに居続けてくれたのでパシャ。

 前年にテンスモドキの激チビターレに合っていなかったら、後刻写真を見てさえ、ごく素直にこれはテンスモドキのチビターレだと信じてしまったことだろう。

 でもこの時すでにテンスモドキの真チビターレの姿を知っていたワタシは、このチビがテンスモドキではないことも知っている。

 では誰?

 調べてみると、体側の褐色のラインの下に白いラインが沿うように走っているところなどからして、どうやらこのチビターレはまだ和名が無い「ホンテンスモドキ属の1種」らしい。

 分布域は広いようながら、図鑑ではいちいち琉球列島の島の名前を個別に書き記されてあるほどだから、沖縄近海ではホイホイと見られているわけではないのだろう。

 すなわち千載一遇、一生に一度の出会いかもしれない。

 せっかくなのでもう1枚。

 あ、ちょっぴりカメラ目線♪

 近縁のテンスモドキと同じく、オトナになると褐色のラインは消えるらしい。

 そのかわり体側にポチッと小さな黒点が出てくるようなので、うっかりテンスモドキと間違えることはなさそうだ。

 はたしてこの先オトナと出会う機会はあるだろうか?

 追記を待て。

 追記(2023年11月)

 初遭遇を果たしたこの年(2021年)の夏だったか秋だったかに、同じポイントの砂底でもっと大きく成長しているこのテンスモドキモドキ(仮名)と出会った。

 サイズ的にほぼほぼオトナと思われたものの、あいにくその時はゲストをご案内中だったため見るだけで終わってしまった…。

 それでも、けっして一生に一度級のレア度ではないことはわかった。

 そして今年(2023年)5月、別のポイントの砂底で3度目の遭遇。

 で、やっぱりカメラ目線。

 これを書いている半年前のことなので、もはやこのチビがどれほどの大きさだったのか記憶にないのだけれど、ファーストコンタクト時の2cmに満たないチビターレに比べれば遥かに大きかった(と思う)。

 この3年で3個体となれば激レアというほどではないにせよ、やはり珍しいことは珍しい存在なのだろう。

 はたしてこの先オトナを撮れるチャンスは訪れるか?