全長 200cm
25年も同じところで潜り続けていてもなお、思いがけない出会いがある。
昨年(2018年)9月のこと。
ワタシが小さなお魚さんとの思いがけない出会いで盛り上がっていたところへ、オタマサが例によってオタオタしながらしきりにゼスチャーを送ってきていた。
その身振りは、なにやら大きなものを観たと伝えたいようだ。
その少し前にワタシも岩陰でネムリブカを観たし、悠々と泳ぐオニカマスを眺めてはいたものの、どうやらそのいずれでもないらしい。
はて、大きなものといっても、カメならカメで、マダラトビエイならマダラトビエイで、それとわかるゼスチャーがあるのだけれど(どっちかわからないことのほうが多いけど)、それらとも違うようだ。
はたしてオタマサが出会った大きなモノとは、いったいなに?
エキジット後聞いてみると……
なんとそれは、全長2mものトラフザメなのだった(冒頭の写真)。
虎斑ザメといいながらそれは子供の頃の模様で、オトナになると豹柄の(英名はレオパードシャーク)、尾ビレの長いこのサメは、日中は海底でジッとしていることのほうが多いおとなしいサメの仲間だ。
しかし思いがけないところでいきなり泳ぎ進むこのテのシルエットを目にすれば、オタマサならずともアドレナリンが大沸騰するのは当たり前。
そのため、手にしていた105mmミリマクロレンズという、小さなモノを大きく写すことに特化したレンズで彼女が無理矢理撮った写真たちは、すべてがトラフザメが泳ぎ去るところを後ろから撮ったもので、なおかつ尾ビレが中途半端に途切れているものがほとんどという、残念なものばかりなのだった。
かろうじて全身が写っていたのは、冒頭の写真1枚のみ。
それでもこうして水納島にトラフザメがいたってことを皆様にお伝えすることができたのだから、なにはともあれよかったよかった。
…って、ワタシは観てないじゃん!!
うれしくないんですけど。
ところで、トラフザメという和名がついているから、日本の海にもちゃんと分布しているサメではある(日本の魚類分類学のルールでは、日本産のものにのみ和名がつけられる)。
近年本島のポイント(それも名護!)では幼魚がしばらく居ついていたらしく、同じ個体であろう写真を数多くネット上で観ることができるとはいえ、居れば「おおっ!」とばかりに話題になるくらいだから、けっしてフツーにいるサメではない。
ワタシが人生でトラフザメと出会ったのは、後にも先にもその昔新婚旅行で訪れたモルディブはバンドス島の砂底で出会ったときだけ(下の写真)。
ヘタクソなため背景が暗くなってるから見づらいけど、背後にブラックチップがフツーに泳いでいるあたり、さすがモルディブ。
こんなサメに出会えるのもモルディブなればこそ、と思っていたのに、そうか、水納島にもいるのかぁ……。
海は永遠にビックリ箱なのである。
次回のビックリは、トラフザメの幼魚をリクエストしておこうっと。