全長 12cm
幼子が本能の赴くままにテキトーに落書きした絵のような模様のこのチョウチョウウオ、その模様をして海と月に見立てたのであろう命名者に乾杯。
チョウチョウウオ類といえば、中層で群れ泳ぐタイプでないかぎりたいていペアで仲良くしているものなのに、このウミヅキチョウを見かける時はたいてい単独でいる。
彼ら自身が相方を見つけられないくらいなのだから、我々が出会う頻度が少ないのも当然だ。
どこかの海に行けばたくさんいるのか、それともどこに行っても単独で暮らしているのかは知らないけれど、水納島で見かけるウミヅキチョウはほぼオトナサイズのものばかり。
すでに記憶は真夏の陽炎のごとくユラユラしているので定かではないものの、おそらくこれまでに一度として「幼魚」といっていいサイズの子に出会ったことがない。
似た食性のセグロチョウの幼魚が内湾性の環境を好むように、このウミヅキチョウチョウウオのチビターレも内湾ぽい環境にいるのかもしれない。
本島近海の「内湾」といえば、真っ先に埋め立てられてしまう環境でもあるので、水納島におけるウミヅキチョウの少なさは、本島沿岸のそういった環境の急速な減少というところに起因しているのだろうか。
ちなみに、セグロチョウのチビターレはこのところビーチ内で目にする機会が増えているから、ひょっとするとビーチで頻繁に潜っていれば、超プリティウミヅキチョウに出会えるかもしれない。
※追記(2021年12月)
2021年シーズン最終盤にえらい騒ぎになってきた軽石禍のあおりをくって、軽石が出入り自在の水納港からうちのボートを避難させるべく、当分の間渡久地港に上架しておくことにした。
おかげで小春日和にもボートダイビングできない状態になってしまったので、仕方なくビーチエントリーでダイビング。
秋から晩秋に訪れると各種豆チョウたちに会えることが多い、桟橋脇の3畳ほどのサンゴ群落も一応チェックしてみた。
すると!
ついにウミヅキチョウのチビターレに会えた!!
25mmほどのチビターレで、少し大きめのミスジチョウ・チビにときおり追い立てられながらも、健気にしぶとくサンゴの枝間をヒラヒラしていた。
まさにプリティウミヅキチョウ♪
チビターレには人生初遭遇だから、もちろん人生最小級。色めき立ち浮足立ちながらも、初登場第1位の姿を記録に残すことができた。
軽石騒ぎでボートを避難させていなかったら、あえてビーチエントリーをして桟橋脇で潜っていたとは思えず、ウミヅキチョウのチビターレとの出会いは果たせていなかったに違いない。
アミモンチビチビ軍団同様、なにげに軽石グッジョブ。
※追記(2022年9月)
本文でも触れているように、ウミヅキチョウチョウウオはチョウチョウウオ類でありながら、ロンリーでいることが多い。
ところが昨年(2021年)だったか一昨年(2020年)だったか、ゲストをご案内中にウミヅキチョウが3匹一緒にいるシーンを目にした。
これだったら、いつの日かペアでいるところを撮れるかも…
…と思っていた「いつの日か」が、今夏(2022年)ついに来た。
でも魚体が大きいからか、それとも仲がそれほど良くないのか、2匹が画面内にほどよく納まるくらいに近づいてくれるチャンスがほとんどなく、↑このペアも…
…これくらい離れていることのほうが多く、寄り添うところを撮りたいワタシは、もっとくっついてくれよぉ…とヤキモキしていた。
1匹でいることが多いと思っていたけど、実はウミヅキチョウは、遠恋OKなカップルなのだろうか。
ところで、前述のようにウミヅキチョウは体が大きいから行動範囲も広く、撮らせてくれよぉ…とお願いしても、どんどん遠くまで逃げていくことも多い。
それがこの時は、なぜだかヒレまで広げてジッとしてくれていた。
なんてお利口さんなんだろう。
でもいったいぜんたい、どうして?
と思ったら…
ホンソメワケベラ・激チビターレが、甲斐甲斐しくクリーニングケアをしていたのだった。
こんなチビチビでも、これくらい大きな魚のお役に立てるのだなぁ。
おかげでウミヅキチョウのヒレ全開姿を拝むことができた。
ホンソメ激チビ、グッジョブ。