(ひょっとするとナミマツカサ)
全長 25cm
しつこく何度も繰り返すけれど、アカマツカサ類を写真だけで見分けるのは、研究者でも至難のワザだそうである。
でもとにかくアカマツカサとその他の種類とは、ある程度見分ける指標を得ることができた。
このヨゴレマツカサは、アカマツカサと一緒になって群れていることも多いため、アカマツカサと一緒くたにされていることが最も多いかもしれない。
↑この群れなどは、むしろアカマツカサのほうが少ない(少なくとも中央の子はアカマツカサだと思う)。
鰓ブタ付近の黒帯模様の塩梅は、なるほどたしかにアカマツカサにそっくり。
でも口に注目してみると、下顎の出具合いがアカマツカサに比べて随分控えめだ。
アカマツカサ同様上方が刀の切っ先のようになる鰓ブタの黒帯模様は、下方がアカマツカサよりも広いという特徴もあるようだ。
それらの特徴に目を向けると、↓この群れは……
おおむねヨゴレマツカサの群れ認定。
↓これも……
ほぼヨゴレマツカサの群れ。
これでもう、たとえアカマツカサたちと混泳していても、見分けることができる……
……かと思いきや。
実は1996年に Myripristis kochiensis という高知県の名がついた種小名で新種記載されたアカマツカサ類の新顔がいて、その名をナミマツカサという。
ヨゴレマツカサと同様の特徴でアカマツカサと区別することはできそうなんだけど、これがまた、なにもわざわざ小分けにしなくていいじゃん…といいたくなるくらいにヨゴレマツカサにそっくりときたもんだ。
で、その違いというのが
ヨゴレマツカサともよく似ているが、ナミマツカサの眼間隔は広く、吻長が短いほか、鰓耙数が32〜36(ヨゴレマツカサでは38〜43)と少ないことなどで判別するとされている。
そんなこと言われても、海の中でも写真でもわかんねーよ!!
と思わず叫びたくなる程度の差異でしかないらしい。
なので、ここでヨゴレマツカサと言っているもののなかには……いや、ひょっとしたらすべてが……実はナミマツカサでした、という可能性もある。
これ以上はもうお手上げなので、とりあえず今は、アカマツカサとは違うようだぞ…というところを認識できるようにしておこう。
それにしても。
こうして見返してみると、これまで「アカマツカサ」と思っていた群れのほとんどが、純然たるアカマツカサの群れではなく、他種が混じっていることに気がついた。
それどころか、アカマツカサが1匹もいない群れすらある。
ひょっとするとその名のとおり、最もフツーにいるのはナミマツカサ…なんてことになるのだろうか?