全長 40cm(写真は4cmほどの幼魚)
ずっと昔の図鑑では「ヨコシマクロダイの色彩変異」扱いだったものが、2008年に刊行された図鑑では「ヨコシマクロダイの近似種」、すなわち別の種類扱いになっていた(2018年に刊行された同書改訂版においても、やはり「近似種」のまま)。
新知見が加えられるのだから、図鑑が新しく出るたびに魚の名前が変わったり新たにつけられたりするのは仕方ない。
とはいえ、魚種が多数掲載されている図鑑ともなれば枕にできるほどの大部書籍のこと、新しくなったからといってその都度ホイホイ買えるものではない。
改定部分だけのオプション販売をしてくれればなぁ…。
紙媒体じゃ無理か。
そんな「ヨコシマクロダイの近似種」略して近似種の幼魚、まだ色彩変異なんだと信じていた頃は、けっして多くはないもののさほど珍しくない程度に、砂地の根の傍らなどで見られたものだった。
それがいつの頃からかすっかり姿を見せなくなり、2010年に10cmくらいまで育ったこの若魚↓に出会ったのを最後に、その後まったく会っていない(と思う)。
たまたま2000年前後の10年間が、わりと多い時期にあたっていただけなんだろうか…。
それはそうとこの近似種、驚いたことに英名では昔から本家ヨコシマクロダイとはしっかり区別されていたようで、その名も「レッドフィン・エンペラー」などという、実に仰々しくもエラそうな名前になっている。
いったいどこをどう見れば赤いヒレ?
それは子供の頃ではなく、オトナの特徴なのだった。
真オトナは未確認ながら、おそらくこのレッドフィン・エンペラーだと思われる若オトナを見ると……
おお、たしかにヒレの縁がレッド(でもなにが皇帝なのかは不明…)。
これを撮ったのも2010年のことなんだけど、今(2020年5月)もまだ、気づいていないだけでオトナも子供もフツーにポツポツいるのだろうか…。
いずれにせよ次回また大部の図鑑が刊行されるころには、そろそろ新和名がつけられているのだろう。
アカヒレクロダイとか??
※追記(2022年4月)
今年(2022年)になって、ようやくこのレッドフィン・エンペラーに和名がつけられたようだ。
その名もカグツチヨコシマクロダイ。
カグツチっていったいなんね?
それは、記紀神話、すなわち古事記や日本書紀に出てくる火の神のことで、イザナギとイザナミを両親に持つ。
ちなみにイザナミが死んでしまうのは、この火の神様を産んだことにより大事なところに火傷を負ったことがきっかけという、生まれた瞬間から罪作りな神様なのだ。
神話はともかく、この名がチョイスされたのは、レッドフィンの「赤」が火を思わせるからなのだろう。
それにしても、まさか神話由来の民俗学的高尚な名前になるとは思いもよらなかった。
「アカヒレクロダイ」なんて、チープで陳腐過ぎてお恥ずかしい…。
※追記(2023年1月)
昨年(2022年)6月に、実に12年ぶりに再会を果たした。
すぐに居なくなってしまうかと思いきや、夏が過ぎ秋が過ぎ冬になっても健在で、年が明けて1月になってもなお同じ場所で頑張っていた。
この間もチョコチョコ観ていたからすぐには気づかなかったけれど、写真で見比べてみるとファーストコンタクト時からけっこう成長していることがわかる。
このテの魚が根の周りにいるのは幼少期だけだから、春の訪れとともにここから去っていくかもしれない。
ま、その頃には撮ろうという気が起こらない色味になっているんだろうけれど…。