全長 15cm
ワタシの個人的な「ハタンポ」についてのイイワケについては、ミナミハタンポの稿の冒頭をご覧ください。
それを踏まえたうえで。
えーと……↑これはホントにリュウキュウハタンポなんでしょうか?(※下段の追記参照)
という根本的な疑惑を抱えつつではあるのだけれど、たまに訪れる岩場のポイントの、半トンネル状のわりと広い暗がりスペースに、尋常ならざるサイズのハタンポ2〜3匹がいつもウロウロしている。
実測15cmくらいなんだろうけど、群れているハタンポといえばオトナでもせいぜい10cm。
それが手のひらサイズとなるといささか驚く。
なにしろ、若魚サイズのソメワケベラと比べてもこの大きさだ。
バカでかさもさることながら、ちょこちょこ見かけるミナミハタンポ(と思っているハタンポ)の完熟オトナと比べると、海中で見るそのたたずまいが少しばかり違って見える。
群れるハタンポは強引に「ミナミハタンポ」ということにしてはいても、群れていないと根拠がない。
違って見えるということは別の種類かもしれず、では誰なんだろう…と調べてみれば、リュウキュウハタンポは胸ビレの基部に黒斑があるのが特徴ということになっていた。
となると、これはリュウキュウハタンポ。
ただその図鑑では、リュウキュウハタンポの下段にミナミハタンポの写真が掲載されているのだけれど、その写真の魚の胸ビレの基部にも黒斑があるように見えるし、そもそも図鑑中の写真では両者の区別がまったくつかない。
……あ。
そういえば、80年代のダイバーなら誰もが持っていた「フィールド図鑑海水魚」(東海大学出版会)のなかで著者益田一御大も、「リュウキュウハタンポとミナミハタンポの区別は困難」と述べておられたっけ。
益田一御大ですら区別がつかないモノをワタクシごときが見分けられるはずはなし。
でも海中では様子が違って見えるしとにかくバカでっかいから、ここは素直にリュウキュウハタンポってことで。
もっとも、この若魚が群れていたりしたら、もちろんワタシは迷わずミナミハタンポ認定することだろう。
というか、混泳していることもしばしばという両者、ホントはそもそも同じ種類なんじゃねーの?
いやはや、お手上げだ。
…と思ったら、実はアカデミズム変態社会でも相当長期に渡って混乱し続けていたらしい。
簡単にいうと、複数の種類をすべて「リュウキュウハタンポ」という和名にひっくるめてしまっていたようなのだ。
専門家がグチャグチャになってたくらいなんだもの、やっぱり我々シロウトとしては、み〜んな「ハタンポ」でいいのかも……。
そのあたりのかなりマニアックな論文が2013年の魚類学雑誌に掲載されたようで、ネット上にもあったので、興味のある方はこちらからどうぞ。
あ、著者の一人はこれまたハタンポドクター・コエダ先生ではないか!
※追記(2021年8月)
その日本屈指のハタンポ専門家であるコエダ先生から、ひょんなことがきっかけで当コーナーで掲載しているハタンポについて、 国内 世界 最強同定をしていただく栄誉に与かった、という話はミナミハタンポの稿で紹介したとおり。
で、ここでずっと「リュウキュウハタンポ」として紹介していた魚種は、なんとなんとユメハタンポであるというご教示を得てしまった。
つまりワタシがそのデカさについてさんざん述べてきた特徴のすべては、ユメハタンポについてのことだったのである。
ちなみにハタンポドクター・コエダ先生が、我々シロウトでも簡易に見分けられるポイントとして挙げてくれたところによると、
ミナミハタンポ
よくみる群れてる小さいやつ(胸鰭基部に黒斑なし、ただし鰭を開くと黒いので注意)
リュウキュウハタンポ
たまにいるやや大きいやつ。少数で群れる(胸鰭基部に黒斑あるが明瞭ではない;胸鰭は全体に赤っぽい)
ユメハタンポ
単独でいる大きいやつ(胸鰭基部の黒斑がとても明瞭;胸鰭の上の方が黒っぽい)
とのこと。
なるほど、こうして明確に示してもらえると、写真の子がユメハタンポだということがなんとなくわかってくる。
これでもう、ここで紹介しているハタンポたちに関する情報の確度には、なんの憂いも無くなった。
あ、リュウキュウハタンポも別枠にしておかなきゃ…。