アカジンのアラのアクアパッツァ

 当コーナーですでに紹介しているアカジンの刺身の稿で触れているとおり、県内有数の高級魚がこのアカジンだ。
 もっぱら刺身で食してこその高級感であるわけだけれど、では三枚におろしたあとの他の部分はどうするか。

 その利用法のひとつがこのアクアパッツァである。
 アクアパッツァとは、平たく言えばイタリア風豪華版マース煮。塩だけではなく様々なダシで煮た魚料理である。

 本来はアサリなどの貝もダシにくわえるようなのだが、島にいるとそうそう手に入るわけではないので、ここではあくまでも簡易アクアパッツァ。

 でもこれが簡易とは思えないほど美味い。

 そりゃそうだ、具がアカジンなんだもの。
 スープが主役といってもいいくらいにダシは美味しいのだけれど、本名をスジアラというだけあって、身の締まり具合といいダシの染み込み具合といい、刺身で食べるよりも煮たほうがいいんじゃないかといいたくなるくらいに身自体も美味しい。

 もともと大きな魚なので、三枚におろしたあとの残りの部分だけといってもボリュームたっぷりで、特に頭なんて目の裏側から頬からアゴから、いくらでも食べられる。特にゼラチンが適度にくっついた部分なんてもうあなた………あ、ヨダレが。

 血気盛んな若い頃とは違い、いい齢になるとこういったしみじみ美味しい系の味が堪えられない。チョコチョコと箸をつつきつつ、ゆったりとグラスを傾ける静かな晩餐……。

 うーん、ゼータクだ。

  


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