ボラの刺身

 カラスミという珍味は世の中に存在するものの、だからといって

 「ボラはうまい!」

 という評価を聞くことはあまりない。
 そもそもカラスミは卵である。
 その大元である魚体はどうなのだろうか。

 これがあなた、実に美味しい魚だったのである。

 他にも美味しい魚がたくさんいる水納島に住んでいて、ボラを食べる機会はなかった。ビーチに群れ泳いでいる姿を見ることがあっても、わざわざ獲って食おうとは誰も思わない。

 が、ここに飢えた野獣どもがいた。
 ドレヤン&そのフレンズである。
 彼ら野獣が島に遊びに来る際、ついでに釣りもしようと釣り道具を用意して連絡船に乗り込もうとした渡久地港で、ボラが泳いでいるのを見てしまったのである。

 すぐさま竿を準備した彼らは、瞬く間に大きなボラを数匹釣り上げた。

 飢えた野獣どもがキャッチ&リリースなどという偽善的愚行などするはずはなく、釣り上げた魚をキチンと捌いて胃袋に納めてこそ供養であるという彼らのルールに則り、その晩、我が家にて彼らは見事にこのボラたちを裁いたのだった。

 三枚におろされたボラの調理を担当したのは、ミスター・イノッチだ。
 熊のような顔をしていながら、小さな小さな熱帯魚を飼っているほどに心優しい青年イノッチにとっての海とは、すなわち食べるものを獲ってくるフィールドである。だから彼の普段の生活では、獲ったものをキチンと捌き、ちゃんと調理までするというのは至極当たり前の話なのである。

 そうやって調理された塩焼きやバター炒めの紹介は後日に譲り、今回はそのボラのお刺身だ。

 肉厚に切られた身を口に含むと、これがあのボラか!?と思えるほどの高級感漂う味と食感。
 やや臭みがあるといえばあるのだろうが、チヌマンに比べれば「無い」といってもいいくらいで、ほどよくのった脂が醤油によく合う。
 知らずに食べて、これをボラと言い当てられる人がこの世に果たしているのだろうか…。
 とにかくただただ美味さだけが際立つ刺身である。

 いやあ、飢えた野獣のおかげですっかりボラを見る目が変ってしまった。

 シェフ・イノッチ

よろず採集調理人イノッチ。

 


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