もずく酢

 モズクといえば、いわずと知れた沖縄県の名産品のひとつだ。
 以前まではズラリと並ぶご馳走の端っこに申し訳なさそうに隠れ潜んでいた小鉢だったものが、最近はその成分フコイダンが健康にいいと評判になり、今やすっかりメジャーの舞台に躍り上がっている。

 そんなモズクはほとんどが養殖もので、リーフ内の浅い海に張られた網にビッシリとついたモズクを、船上から掃除機のようなポンプで吸い上げて収穫される。

 島のサイズのわりにはやたらと広い水納島のリーフ内でもモズクの養殖は盛んに行われており、毎年7月くらいまで、連日のようにモズク船が操業(?)している姿が見られる。

 しかし彼らはみな、本島のウミンチュだ。
 そう、島の人たちはまったく養殖にはタッチしていない。同じ本部町であるということで、本部町内の漁業権を持っている本島のウミンチュたちが、水納島のリーフ内を利用しているのだ。

 そんなウミンチュたちのほとんどは、島の人たちになんの挨拶もなし。ところがたった一人だけ、島の人たちに、と毎年大量のおすそ分けをしてくれるウミンチュがいる。
 島内各家庭に分配してもなお大量のそのおすそ分けだけで、夫婦2人でチョビチョビ食べていれば、余裕で半年から1年分くらいになるのだった。

 また、モズクが豊作の年には、養殖網から漏れ出たものか、リーフ内の随所で普通にモズクが繁茂するので、大手を振って「収穫」することができる。時化て千切れたモズクも、水が淀む場所に大量に溜まるので、それが千切れたばかりであればすぐさま収穫可能だ。
 GWに訪れるゲストの中には、モズクの収穫が目的の一つになっている方もいるほどなのだった。

 というわけで、島内にはモズク養殖業者が一人もいない水納島ながら、モズクを賞味する機会は山ほどあり、モズクの天ぷらなどももちろん定番料理の一つだ。

 そんなモズクの最もオーソドックスな食べ方が「もずく酢」。
 いくら健康に良くても天ぷらにしたら逆効果のような気がするけど、酢のものだったらいかにも健康に良さそうな味になる。

 ところがこの酢のものは微妙で、酸味が利いた酸っぱい味が好きな方ならともかく、この酸っぱさが原因で「モズクは嫌い」と言う人もいる。
 「モズク=酸っぱい食べ物」になってしまっているのである。
 それは大きなゴカイだ。
 なにも酸っぱい味でなければならないわけではない。

 酸っぱいからモズクは嫌いだ、という方は、試しに麺つゆなどで召し上がっていただきたい。

 どうです??

 これならどんぶり一杯食べられるでしょう(笑)。