生タコの刺身

 水納島に来てタコを食べたことがないなんていったら、それはモグリである………というほど、宿の食事でしょっちゅう出るわけではないものの、この島での生活はタコ抜きでは語れない。

 それほど生活に密接した海の幸であるこのタコ、食用のものでもいろいろ種類があって、本当の名前は、たとえば下の写真のタコはワモンダコという。でも、たいてい島ダコと呼ばれる。
 ちなみに、本当の名前がシマダコというタコもいるのでちょっとややこしい。まぁ、どっちにしろ美味しいから名前などどうでもいいかもしれない。

 で、このタコ。
 その昔は冷凍庫などなかったので、タコといえば干してから保存食にするものだったらしい。まだ各家庭に囲炉裏があった頃は、囲炉裏の上方にズラリと干しダコが並んでいたそうだ。

 そんな話も今や昔。
 今ではたいていの場合、捕まえたら塩もみしてぬめりを取り、一度冷凍する。そうすると、茹でた後にほどよい硬さになるのだ。
 つまり、タコをお刺身で食べる場合、普通は一度茹でたものなのである。

 ところが。
 手間はかなりかかるものの、獲ったばかりのものをナマでお刺身にすると、これがまた茹でたタコでは味わえない極上の味になる。天女の羽衣のような透き通るような白妙の肌は、黙って出されるとそれがタコであることにすら気づかないほどだ。

 ただし、あまり大きなタコになると、さすがに生では歯ごたえがありすぎて食べるのが大変だったりする。海で偶然出会ってむんずと捕まえるのに適しているくらいが、最も美味しくいただけるサイズといえる。

 生前のお姿

タコに出会ったとき、
獲るか、撮るか、それが実に大きな葛藤になる。
でも上のタコは、撮られて獲られた。

 


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