サザエの出汁ソバ

 海でサザエを獲ってくるというのは、離島の住民にとっては街に住む方々がコンビニで弁当を買うということくらいに当たり前のことである。

 ただし、コンビニで弁当を買うほどには「コンビニエンス」ではない。
 泳いで獲る人も、潮が引いているときに歩いて繰り出す人たちも、それなりに頑張らなければならないからだ。

 そうやってせっかく海に行くわけだから、一食分を獲ってきたらそれでOKってわけにはいかない。一度海へと繰り出せば、それこそ山のように……というほど獲れるわけではないにしろ、それでもやはり大量に獲ってくる。

 獲ってきたサザエは、一度茹でてから冷凍保存にする。
 そうしておけば、いつなんどき不意の来客があってもとりあえずもてなせるし、何かのときのお土産にもできる。 

 この大量のサザエを茹でるとき、小さな鍋でいちいち少量ずつ茹でていたのでは埒が明かない。
 そういうときに便利なのがシンメーナービーだ。
 これなら100個や200個のサザエなどいっぺんに茹で上げることができる。

 そうして大量のサザエを茹でたあとの湯が!!

 極上の出汁になっているのである。
 そりゃそうだ、サザエ本体だけでも大量だというのに、そのうえ貝殻についたいろんな海のエキスも一緒になって染み出しているのだから。

 それを教えてくれたのは、ほかでもない機関長だった。
 茹でたサザエを取り出した後、しばらく鍋を放っておくと、濁っていたものがだんだん澄んでくる。その上澄みを別の鍋にとって、多少の味を加えてそばの出しに使うと……

 めちゃんこ美味いッ!!

 もちろんそばに限らず、ソーメンでもおすましでもなんでもOKである。
 サザエは保存しておけばいつでも味わえるけれど、こればかりは獲れたてホヤホヤのときにしか味わえない至福のゼータクなのだ。 

 ただいま茹で中

この大量のサザエが茹で上がったあと、
そこには極上の出汁が残される。
茹でたばかりのサザエもまた美味いこと美味いこと……。

 


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