方言名の場合、その地方全域で同じ名前というわけではないことが多いので、シチューといって全県的に通じるのかどうかわからない。
似たような名前にシチューマチという魚がいるけどそれとは違い、水納島でシチューといえば、それはイスズミ(おそらくミナミイスズミ)をさす。
イスズミはリーフ近辺の浅いところで群れている魚だ。
リーフ内と外を自由に行き来しているらしく、リーフ内で網を仕掛けると、タイミングによっては大漁になることもあるため、島の人々にとってはお馴染みの魚である。
チヌマンと同様、いわゆる「クセ」がある。
普段から味も素っ気もないマグロの赤身を食べてオイシイオイシイと言っている方々のお口には、まず合わないだろう。
でも「魚の美味しさ」の基準が都会の人たちとは異なる我々「現地」の人間は、こういった「クセ」に無常のヨロコビを見出す。
そのため、スーパーや居酒屋でこの魚の刺身を食す機会はまったくといっていいほどないかわりに、島にいると普通に食べる機会があるわけだ。
もちろん、機関長キヨシさんのおかげだけど……。
「味」のある魚を刺身にする場合は皮付きにする場合がほとんどで、ほんのり表面を炙るなり火を通すなりするとジョートーになる。
こういった魚を美味しく感じられるようになると、島の生活での食卓がやたらと豪華であることに気づくのだった。