●海と島の雑貨屋さん●
写真・文/植田正恵
月刊アクアネット2006年10月号
実りの秋、読書の秋、食欲の秋など、秋はなにやら盛りだくさん。そんな秋の風物のひとつに運動会がある。
私が小学生のころは第2次ベビーブームとやらで、6学年合わせると約千人、1クラス40名はあたりまえという状況だったから、入場行進ひとつをとっても、それだけでものすごい練習が必要だったし、それをまとめる先生方の苦労は相当なものだったに違いない。
そのため毎年9月になると、体育の授業は運動会の練習時間と化していた。
ところが水納小中学校の運動会となると、行事名こそ「大運動会」と堂々としたものながら、なにしろ児童生徒合わせて4名(2006年現在)である。児童生徒も先生も全種目に全員参加しても、午前中ですべてが終わってしまうくらいの規模だ。
そこで登場するのが島民および親戚や郷友会、以前島に赴任していた先生といった人々。
少ない児童生徒のために場を賑やかに盛り上げようと、毎年スケジュールに都合をつけてやってきてくれる。
船の時間が決まっているから30分ぐらい見て帰る、というわけにいかないので、半日がかりで応援と参加をしに来てくれるのだ。
だからたった4名の運動会でも100名を超すギャラリーが加わって、水納島的には一大イベントとなるのである。
一度それを味わったうちのゲストの中には、わざわざ運動会の日程に合わせて潜りに来る方もいらっしゃるほどだ。
だからこそ心配されるのが、その日の天候である。
台風の可能性もあるし、そうでなくても季節風が吹くと、日によっては連絡船がストップしてしまう。
本島在住の郷友会あたりには、学校から公的な運動会の案内も送られているので、小規模校の運動会だからといってもなかなかフレキシブルに対応できない。
おまけに開催か中止かを左右する問題が海況となると、直前まで決定できないことが多いので、関係各方面への連絡のタイミングが難しい。
学校側の苦悩は計り知れない。
まさに昨年がそうだった。
台風が近海をかすめ、天気は良いものの、連絡船は欠航。お天気的には運動会を開催することができるものの、そうなると来賓をはじめとする島外からの参加者が来られない。
決行か中止(延期)か。
最終的には校長先生の判断で、島内だけの、ギャラリーを含めても総勢50名ほどのささやかな「大運動会」が決行された。
いつもより寂しくなるかと思いきや、これが案に相違して、普段観客と応援団に徹しているおじいやおばあまで参加したり、引退を決め込んでいたロートル船員さんたちがスニーカーを履いてグランドに来たり、地域参加の種目の場合ゴールテープ係といった裏方に徹することが多い子供たちも競技に参加したりするなど、誰も彼もがいつも以上に運動会を盛り上げようとした結果、いつもと一味違った心温まる運動会となった。
個人的にも、過去11回体験した島の運動会の中で、1、2を争う素敵な運動会だった。
島の人たちも先生方も子供たちも、なんだかとっても水納島っぽくて、とても素敵な手作りの運動会だったと口を揃えて言っていた。
いわば、災い転じて福となったわけだけれど、はたして今年はどんな運動会になるのだろう??