甲幅 15mm (写真は10mmほど)
オオアカホシサンゴガニの稿で、勢い余って「アカホシサンゴガニという種類はいない」などと書いてしまったあと、それは大きなマチガイであることに気がついた。
アカホシサンゴガニという名で画像検索をしても出てくるのはオオアカホシサンゴガニばかりだったので、例によって思い込みと短絡思考で「いない」と断定したのだけれど、他のサンゴガニについてちょこちょこ調べていたところ、アカデミック変態社会ではれっきとした種として和名「アカホシサンゴガニ」が存在し、学名(Trapezia tigrina)にいたっては19世紀の昔からあることを知ってしまった。
その学名で画像検索してみたところ、オオアカホシサンゴガニにしか見えない写真が並ぶなかに、なんてことだ、たしかにアカホシサンゴガニとは違って見える赤点模様のカニの写真が…。
慌てて当コーナーのオオアカホシサンゴガニに追記したのは言うまでもない。
以下はその追記の内容と重複します。
前世紀に撮ったフィルム写真のなかに、当時はオオアカホシサンゴガニのチビと思い込み、そのまま記録の底に埋まっていた写真があった。
それが冒頭の写真で、サンゴガニの仲間たちをリニューアルしている今回、当時は名前を知らなかったアカモンサンゴガニかな…?と思い、オオアカホシサンゴガニとは別個に仕分けしていた。
アカホシサンゴガニの実在を知り、あらためて見比べてみると、たしかにオオアカホシサンゴガニのチビチビ(↓)とは赤点模様の密度が違うように見えるし…
地色が白いあたりは、アカモンサンゴガニ(↓)の特徴とも異なっている(アカモンサンゴガニの地色はオレンジ系)。
過去に写真を撮っていたからといって、ではそこかしこで観ているのかというと、そういうわけでもない。
ホントはフツーにいるにもかかわらず、これまで見落としてきただけなのだろうか。
それとも、(水納島では)滅多に観られない種類なのだろうか。
撮った記憶が微塵もない前世紀の写真1枚だけでは、推測のしようもない。
手持ちのどの図鑑にも「アカホシサンゴガニ」は掲載されていないため(名は掲載されていても、写真はオオアカホシサンゴガニという図鑑はある)、危うくこの世に存在していない認定してしまうところだったアカホシサンゴガニ、(個人的に)すんでのところで実在が明らかとなったのだった。
※追記(2022年5月)
アカホシサンゴガニという種類もいる、と認識も新たにリーフエッジ付近でサンゴの枝間を覗いていた今春(2022年)、初めて海の中でアカホシサンゴガニを認識することができた。
海中ですぐにそれとわかった留意点その1・目の色が違う。
↑アカホシサンゴガニの目の色は体の地色と同じなのに対し…
…オオアカホシサンゴガニの目は緑色をしている。
冒頭の写真たった1枚ではそれが特徴なのかどうかわからなかったのだけど、どうやら眼の色でも見分けられそう。
その2・住んでいるサンゴの種類が違う。
↑これが今回見つけたアカホシサンゴガニが暮らしていたサンゴで、オオアカホシサンゴガニが暮らしているヘラジカハナヤサイサンゴに比べると、枝間がとっても狭いイボハダハナヤサイサンゴ(の仲間)。
体が大きなオオアカホシサンゴの大人サイズは、このサンゴの隙間では暮らせない。
ちなみにオオアカホシサンゴガニが暮らしているヘラジカハナヤサイサンゴの枝間はこんなに広い。
広い枝間の奥にいるのがわかりますか?
アカホシサンゴガニもこのサンゴに暮らすことはあるのだろうけど、少なくとも枝間の密なイボハダハナヤサイサンゴ(の仲間)に、それもペアでいるとなれば…
…オオアカホシサンゴガニではないことだけはたしかだ。
いたんだなぁ、アカホシサンゴガニ…。
でもアカホシサンゴガニの存在を認識してから注意してサーチしていても、まだこの1ペアにしか出会っていないから、やはりオオアカホシサンゴガニに比べると遥かに個体数は少ない…
…のか、枝間の狭いサンゴに暮らしているから見つけられないだけなのか。
引き続きサーチを続けてみよう。