(Diogenes biramous)
甲長 5mm
冒頭の写真は、だんなが私のポジフィルムの写真の海から探り出してくれたもの。
かつてポジフィルムで写真を撮っていた頃は、整理して残すに足るという合格点が与えられたものについては、整理番号を付けて、各ジャンルごとにポジフィルム用収納シートに入れ、一方で別紙にはその番号ごとに撮影年月日や撮影地、撮影機材を記録していた。
フィルムマウントに入れているものだと、マウント部分にある程度のデータを直接書き込めるから、1枚だけ保管場所を別の場所に移してもいつでも写真の出自(?)を知ることができる。
ところが、いちいちマウントに入れると収容するにもかさばるし手間もかかるために、後年は剥き身のフィルムを1枚1枚納めることができるポジフィルム用ビニール袋に入れるようになり、そのビニール袋を収納する切手蒐集用シートのようなものの各コマごとに、番号を記入したシールを貼る、という方法をとるようになった。
この場合、何かに使う際にいったんアルバムシートから写真を抜き出すと、写真には番号等のデータがまったく無くなってしまう(右側)。
その都度元のファイルに戻せばいいだけの話ながら、スキャンするためにファイルから取り出した写真をその都度元に戻す…などという作業はだんなにはもとより不可能。
おのずとスキャン済みのポジフィルムは溜まっていく一方となり、やがて元の場所がわからなくなる。
冒頭の写真もそのようにして所属不明になってしまったもので、今となってはいつどこでどのように出会ったのか、まったく手掛かりがない。
このようなヤドカリの写真を当時なぜシートから抜き出して利用していたのか、理由はまったく思い出せない…。
使用理由のヒントも写真の手掛かりもないけれど、撮影当時はまったく不明だったはずの種類については、このわずかにヤドカリが写っている画像だけで見当をつけることができた。
ヤドカリが写っている部分はわずかながら、眼の感じや眼柄の色、そして脚の模様からして、どうやらこのヤドカリさんはまだ和名が無いDiogenes biramousと思われ、いちいちアルファベットを書いていられないから、ここではビラモウスと呼ぶことにする。
図鑑によるとビラモウスは日中から浅いところでフツーに出会えるヤドカリのようで、内湾の砂底を好んで暮らしていると述べられている。
でも画像を見るかぎりでは、どう見ても砂底ではなさそうだ。
肝心の触角がハッキリ見えていないけれど、ビラモウスもまたツノヤドカリ属の仲間で、その触角はUHFアンテナのように横バーがたくさんついているらしい。
ただし同じ属の「ツノヤドカリ属の1種」の触角ほど「カンザシヤドカリ化」はしていないようで、ツノヤドカリ科の1種とは眼の雰囲気も全然違う。
どちらかというとフリソデエビの眼に似ているような気が…。
繊細なフォルムの歩脚の関節部には眼柄同様赤い模様があるなど、なかなかオシャレなヤドカリさん、なのになぜ私は貝殻から少ししか姿を見せていないこの写真しか持っていないのだろう?
もう少し体が出ていて色模様がよくわかる別カットがあるのだろうか。
自分のことなのに他人事のように述べているくらいだから、その別カットの収納場所はもちろん、別カットがホントにあるのかどうかすら私にわかるはずもなし。
どこにあるかわからない写真を探すよりも、実際に海で出会ったほうが早いのか、それとも、まだ和名が無いくらいだからそうおいそれと出会える種類ではないのか。
次に掲載することができる写真は、過去写真になるかフィールド写真になるか、乞うご期待!