体長 25mm
アカホシカクレエビの仲間といえば、その昔の掲載種数が限られた図鑑では、アカホシカクレエビかニセアカホシカクレエビ、ちょっと頑張ってオドリカクレエビが載っているくらいだった。
ところが変態社会が確立してそのあたりの需要が増してくるにつれ、津々浦々から情報が集まり研究も進み、エビやカニに特化した図鑑が刊行されるまでになってきた。
昔のことを思えば隔世の感すら漂うこの劇的進歩のおかげで、かつて不完全燃焼状態だった私のナゾは、酒を飲まずに1週間過ごした我が脳味噌のようにかなりスッキリ(入院したとき以外経験は無いけど…)。
アカホシカクレエビにそっくりではあるけれど、ザックリ言うと、光を当てても模様の色が青っぽければニセアカホシカクレエビ、と考えてほぼ間違いない(あくまでも「ほぼ」)。
前世紀の水納島ではアカホシカクレエビよりもニセアカホシカクレエビのほうが、遥かに遭遇率が高かった。
冒頭の写真はハナガササンゴについていたものながら、彼らが好んで宿にするのは↓ナガレハナサンゴだ。
昔の水納島の海では↑このように大きく育ったナガレハナサンゴがそこかしこで観られ、それらをチェックすると「ま~たこのエビか」ってくらいに、ニセアカホシカクレエビがどこでも普通に見られたのだ。
上の写真のようなひと抱えほどもある大きな群体なら、10匹以上ワラワラしていたこともあった(PCでご覧の場合下の写真をクリックすると画像が大きくなります)。
ところが今世紀になってから、どういうわけだかナガレハナサンゴの群体が次々に死にはじめ(白化とは関係がないと推測している)、かといって新たな群体は育ち始めるしりから次々に調子を落として死んでいくようになってしまった。
サンゴが白化で壊滅しても年数をかけて復活を遂げているミドリイシ類はむしろ丈夫な種類のようで、サンゴの中には水質変化に敏感で適応できる範囲が狭いデリケートなモノたちも多い。
アクアリウムの世界ではナガレハナサンゴはそんなデリケートなサンゴとして知られており、ちょっとした水質変化で調子を落としてしまうという。
それをふまえると、もう沖縄本島北部近海の水質は、彼らの肌に合わなくなっているのかもしれない。
宿が無くなればもちろんそこに住まうはずのニセアカホシカクレエビも観られなくなるのは当然で、フィルムを使用していた頃には当たり前のように撮っていたニセアカホシカクレエビが、今ではレアといっていいほど出会えなくなっていて、たま~に小柄な個体が何かに1匹ついているのを見ることがある程度(それもすぐにいなくなる)。
ましてやナガレハナサンゴの上にいるニセアカホシカクレエビなんていったら、今の水納島では超レアシーンといっていい。
せっかく研究が進んで分類がスッキリし、多様な種類が掲載されている図鑑が世に出るようになったというのに、肝心のニセアカホシカクレエビが世から去ってしまうなんて…(水納島限定)。
ところどころで健気に成長しているナガレハナサンゴになんとか頑張ってもらって、シアワセのニセアカホシパラダイスが復活することを願ってやまない。