エビカニ倶楽部

オリビアシュリンプ

体長 30mm

 様々な理由が重なって、エビカニたちが好んで暮らしの場にする付着生物が激減してしまった近年の水納島の海中では、グッと盛り上がるエビカニチェックポイントがとっても少ない。

 少ないながらも各ポイントごとに私のチェックポイントはいくつかあって、訪れるたびになにかいはせぬかとサーチをしている。

 一昨年(2020年)の秋のこと、台風後の海は雨降り&水はニゴニゴというバッドコンディションだった。

 でも雨降り&ニゴニゴで海中が暗くなっていれば、夜行性のエビカニたちが日中から活発になるという利点があるから、ダイバーとしてのモチベーションは上がらずとも、エビカニラバーとしては期待値がグッと上がってくる。

 日中というのにライトが必要なほど暗い海中で、いつもチェックしているニクイロクダヤギの枝間を覗いてみた。

 するとそこには、見慣れないエビちゃんの姿が!

 なんとオリビアシュリンプ!

 冒頭の写真は実は天地が逆で、実際はこのような向きでニクイロクダヤギの枝間にいた。

 同じサンゴモエビ系でも、サンゴモエビフシウデサンゴモエビのようにサルでも観られるほどフツーにいるサンゴモエビとは別格のスター、オリビアシュリンプ。

 八重山だったか宮古だったかで随分昔に発見されて以来、その名は(一部変態社会で)轟きまくっているものの、これまで一度として出会ったことがなかった。

 それもそのはず、そもそも分布の中心は熱帯海域らしく、その分布域からすれば沖縄、それも本島地方になると辺境も辺境なのだ。

 逆にフィリピンあたりでは定番だそうで、ちょくちょく目にする機会がある写真はおおむねそちら方面で撮られているもののようだ。

 エビバイブル「サンゴ礁のエビガイドブック」では、「日本では八重山諸島で観察されている」と記されており、そこから北では観察例がないことになっている(2013年当時)。

 その程度の観察例だから、和名はもちろん学名すらいまだつけられていない。

 すっかり有名になってはいても、いまだ日本ではレアレアシュリンプなのである。

 そういうこともあって、エビカニ変態社会では、「死ぬまでに一度は会っておきたいエビ」のひとつとしてランクインしているほどだ。

 そんなオリビアシュリンプと、ついに初遭遇!!

 よく観れば、故・忌野清志郎が自分用にチェスの駒を作ったらこんなナイトになりそう…ってなくらいに派手派手かつ立派なタテガミ状の剛毛が。

 …といいつつ。

 発見時&撮影時は「なんか見慣れないサンゴモエビだなぁ…」と思った程度だったりする。

 だって、その名が轟く超有名シュリンプとはいっても、出会ったことも出会う機会もないと存在を忘れちゃうじゃないですか。

 にしても、こんなハデハデな姿を観て「なんか見慣れないサンゴモエビ…」と思っていただけの私の目って、いったいどんだけ節穴なんだろう…。

 たとえ節穴でも、出会いはニクイロクダヤギの枝間を覗いたればこそ。

 オリビアシュリンプを画像検索すればズラリと写真が並ぶけれど、このようにサンゴ系の枝間にいるところを写したものが見当たらず、フシウデサンゴモエビがいるような場所で撮られているものばかりだ。

 ピンクの枝間というこのシチュエーションも、エビ本体同様になにげにレアなのでは?

 ところで、この日日中に姿を観ることができたのは、おそらく海中が暗い日であればこそで、普段の日ならもっと暗がりの奥の奥に潜んでいるのだろう。

 バッドコンディションにも関わらずその日潜っていたのはゲストがご滞在中だったためで、ノーゲストならわざわざ潜ることはなかった。

 ということはすなわち、オリビアシュリンプと人生初遭遇を果たすことができたのは、その日お越しになっていたゲストのおかげということになる。

 ちなみにそのゲストはセルフダイビングの方で、しかもユラユラ教の教祖様だから、驚天動地のレアシュリンプ発見!の報を後刻知ることとなってもどこ吹く風で、まったく我関せず。

 オリビアシュリンプが後にも先にもその1回きりの出現で終っているのは、せっかく登場しても(私も含めて)その場で誰も盛り上がってくれないからいじけちゃったせいかもしれない…。

 再会できた暁には、迷わず杏里の歌を耳元で歌って聞かせるとしよう。