H大団円………??(3月10日)

 ……ね?話は長くなったでしょう?
 ともかく、2泊3日の会津旅行を終え、じっくり余韻に浸りながら東京での最後の一夜を過ごそうかという我々を、こういうメンツが待っていたのである。

 なんであの大方洋二さんが?
 どうしてミスター杉森が?
 あ、コスゲさんも、ごっくん隊も!!

 そしてそして………

 キノッピーも!!

 なんでなんで??
 どうしてどうして??
 そして、いったい…………ここはどこ??

 …………………

 ここは、新橋汐留口方面の駅前ビル地下にある店、BOXというところ。
 世のダイバーが多く集うお店なのだそうだ。
 テレビを見ていると、よくサッカーとか野球を観戦しているスポーツバーというのが出てくるけれど、いわばここはそのダイビング版。店内には大きな画面があり、そこではサッカーでも野球でもなく、誰かが撮ってきた水中写真やムービーが流れている。
 入り口にはうみまーる・あーす
~のアシカの写真が飾られていたほか、店内のそこらじゅうに美しい海の写真が。
 まさに絵を描いたようなダイビング業界!!

 ダイビング業界にはとんと縁がない我々が、どうしてこんな最先端ホットスポットに来ているのかというと、実は幹事コスゲさんから、是非お連れしたい店がある、ということで声をかけていただいたのだ。コスゲさんは、この店で毎月のようにスライド漫談ショーをしておられるという。
 せっかくだからゆっくり飲める日を選びたいところだったものの、これまでの我々の経過をお読みいただいてきたみなさんにはおわかりのとおり、都内でこうして飲める日は最終日しかなく、平日というのに無理を承知でコスゲさんにその旨告げると、彼は快く了承してくださった次第。

 そうだ!!

 だったら、「鱗」ではウロコムシ検閲却下されたキノッピーと飲もう!!
 勝手にそう決めた僕は、コスゲさんにビール大魔王が来ることの了承を得、さっそくキーノ小岩さんに連絡をしたところ、

 「あ、そうですか!火曜日以外だったらいつでも大丈夫です!」

 やる気みなぎるご返事をいただいた。
 ……のだが。
 この日10日は火曜日なんですけど………。

 「あ、そうですか!だったらなんとかして8時頃に行けるようにします!」

 彼のこの熱意に、読者は涙しなければならない。
 これで、鱗でのウロコムシ検閲のフォローになるだろう……。

 そこに。

 「新橋あたりで飲みませんか??いい店があるんですけど!!」

 ごっくん隊リーダーT沢さんから連絡が。
 多くのサラリーマンが集う新橋の飲み屋というものにも非常に心引かれるものがあるのだけれど、前述のとおりもはやこの10日の晩しかあいていない。
 なので、リーダーにもボックスで飲みましょう!ということにし、コスゲさんにはごっくん隊も参加してしまいます……という旨、了承を得たのであった。

 というわけで、この日である。
 新橋に宿を取っていたものの、会津から帰ってきた関係でちょっと遅れてお店に到着。<かなり彷徨って……
 そしてコスゲさんの名を告げると案内された場所には、なんと天下の大水中写真家、大方洋二さんまでいらっしゃるではないか!!
 超久しぶり!!


撮影:杉森雄幸

 浅草行や駒形どぜう編でも触れていた「著者」とは、実は大方洋二さんのことなのである。原稿を受け取りにうかがうだけなので、10分20分で済む用事なのだが、僕はそこで長居し、大方さん手ずからのコーヒーをいただきながら、いつも3〜4時間だべっていた。
 その後まさか水納島にくることになるとは思っていなかった当時、僕にとっての大方さんのおうちは、アスファルトジャングル東京都内唯一の「海」だったのだ。
 ちなみに、何を隠そう、大方洋二さんの名著『魚の不思議ウォッチング〜大方洋二の「海の生態学」〜』(緑書房刊)は、僕の企画立案である。フフフ。<実際の作業が始まったときには退社していたけど…。

 当時は僕も魚の不思議をウォッチングしていたものなのに、今ではすっかり「の不思議ウォッチング」になってしまった……。

 我々が水納島に来てからもしばらくは、サンゴが元気だったこともあって毎年のように大方さんはお越しくださり、有名な「がんばるオジサン」というポイントの名の由来を作ってくださりもした。<大方さんのブログ参照。

 もう10年以上も前の話だ。

 その後のご活躍はみなさんご存知のとおりで、コスゲさんからもちょくちょくお話を伺ってはいたものの、まさか、まさかこれほどまでに…………

 ……まったく変わっておられないとは!!

 一別以来10年以上経っているというのに、この全然変わらなさはなんだ。
 このままでは我々が追いついてしまうではないか……。
 かくなるうえは、大方さんにはヨーダになっていただくしかない。
 マスター・ヨーダならぬ、マスター・ヨージってことで……。

 コスゲさんはそういったことをご存知だったので、大方さんにも声をかけてくださり、今宵の席となった次第。さすが幹検有段者!!ありがとうございます。

 懐かしい顔は大方さんだけではなかった。

 ご存知、ミスター杉森!!
 現在、ムービーも含めて多方面で活躍中の水中写真家である。そしてクロワッサン黄金時代といってもいい98年、99年に、スタッフとして常駐してくれていたことをご存知の方も多いだろう。

 この宴席上、例によってうちの奥さんは、他のすべての人がついていっている話題に、1人だけ、まるで違うテーブルに座っている人であるかのごとくついていけてないぶりを発揮。
 みなさんはうちの奥さんのことを少しいいほうに誤解していて、人によっては「やり手の女将」的有能な人間であるかのように思われているフシがあるのだが、それは大きな誤解なのである。
 その点、長期間同じ屋根の下でともに暮らしたミスター杉森は、このうちの奥さんのイケテナイぶりを久しぶりに味わい、

 「いやあ、今の話を聞いたら、なんか正恵さんだぁ!って気がしますねぇ!!」

 そうなんですよ、皆さん!!

 ちなみに左のアンちゃんはフィリピンはリロアンのガイドさんだそうで、この日たまたま別席で飲んでいたのだけれど、なんとなんと、彼はクロワッサンがスタッフを募集していた6、7年前、電話にて申し込んだところ、あっさり断わられたのだという。
 電話の相手は男性でしたか、女性でしたか??

 「男性でした!!」

 俺じゃん………。

 まぁ、その後の彼の人生を見ても、彼はうちに来なくて正解だったわけで、その際の判断は間違ってはいなかったのだろう。

 そんな宴席で、この人たちも全開!!

 

 みなさん、島では単なる酒飲みのおっさんと化しているというのに、都内にあっては見事に、働くサラリーマン!!
 ごっくん隊とキノッピーがスーツ姿だなんて………

 これ一事でも、東京は何か間違ってる!!と言える。

 さて。
 遅れて7時半に到着し、9時頃には時計を確認した記憶があるのだが、気がつけば11時を過ぎていた。
 その間、ごっくん隊パワー炸裂で、黒糖焼酎の4合ボトルが次々に空いていく。
 次のボトルを頼むときなど、スタッフのオネーチャンが思わず

 「はやッ!!」

 と口にしたほど。
 そんな勢いで飲んでいたら当然……………

 …………隊長は再び夢の旅人に。
 ま、上の写真をご覧いただければ、隊長が夢の入り口10秒前であることがお分かりいただけよう…。
 なんだかこのところ、どんどん夢の世界に埋没する時刻が早くなっていってる気がするんですけど………。

 そんなこんなで、会計はコスゲさんが通常利用している感覚ではありえない金額となり、ごっくん隊には追徴課税がなされたのであった。

 で。再びいつ会えるかわからない大方さんやミスター杉森、そしてゲストの皆さんたちと、ちゃんとした別れの挨拶をしたかったのは山々なのだけれど、大きな大きな隊長を、地下の店から路上にお連れしている間に、終電間際のみんなはいつの間にか帰ってしまった。
 なんだかこのところ、会長とか隊長といった「長」のつく人のおかげで、きちんとした別れの挨拶ができないでいる……。

 とにかく最終的に隊長をタクシーに押し込め、リーダーが付き添うことを確認したあと、さすが幹事、最後まで看取ったコスゲさんともそこでお別れし、僕たちの長い長い旅行(?)はようやく大団円を…………

 ……迎えなかったのだった。
 まだあの人がいた。
 あの人とは……